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高齢者の医療費負担、その実態と「備え」の必要性
厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によれば、国民年金の平均受給月額は5万7,584円、厚生年金(第1号)の平均受給月額は14万6,429円です。「月10万円」という額は、厚生年金受給者全体のなかで下位20%ほど。鈴木さんの生活が、どれほど苦しいか想像がつきます。
一方で、高齢になれば医療費はかさむ傾向にあります。厚生労働省の統計資料によると、医療費の自己負担額は40代で推計3万~4万円ですが、70代では7万円台。年金収入に頼る高齢者にとって、現役時代以上の医療費負担はかなりのもの。後期高齢者医療制度では、自己負担は原則1割(現役並み所得者は3割、一定以上の所得がある場合は2割)ですが、鈴木さんのように、月1万円の医療費もツラい、というケースも珍しくありません。生活費を切り詰めた結果、本来受けるべき医療を控えてしまう「受診控え」や「服薬中断」は、健康状態をさらに悪化させ、結果的により多くの医療費がかかるという悪循環に陥る危険性もはらんでいます。
老後の生活設計において、すべてを年金収入だけで賄うのは困難です。現役時代から自身の年金見込額を把握し、不足分をどう補うか(貯蓄、iDeCoやNISAなどの資産形成、可能な限り長く働くなど)を具体的に計画することが求められます。
また、医療費の自己負担が一定額を超えた場合に払い戻しが受けられる「高額療養費制度」など、公的な負担軽減制度もあります。こうした制度を適切に利用することも、老後の医療費負担を乗り越えるための一助となるでしょう。
[参考資料]
厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』
厚生労働省『年齢階級別1人当たり医療費(令和4年度)』