(※写真はイメージです/PIXTA)
年金事務所で老後プランが一気に崩壊
田中幸子さん(65歳・仮名)。年金事務所での一部始終について話してくれました。
さかのぼれば、20年以上前、夫・一郎さん(享年45歳・仮名)を病気で亡くしました。育ち盛りの子どもが2人いるなか、どうしたらいいのか……そのとき生活を支えてくれたのが遺族年金です。月12万円ほどの遺族基礎年金と、月6万円ほどの遺族厚生年金。合わせて月18万円ほどが、生活を下支えしてくれました。
子どもが大人になると(18歳になった年度の3月31日以降)遺族基礎年金は受け取れなくなりましたが、代わりに月5万円ほど加算(中高齢寡婦加算)。月11万円ほどではあるものの、遺族年金があったおかげで、「子どもたちを大学まで行かせることができた」と田中さん。
そして65歳。定年を迎えたのち、もともと自身の年金を受け取れるようになるまでは頑張って働こうと考えていたといいます。
「ねんきん定期便などで、自分の年金はだいたい月14万円くらいになることはわかっていました。それに、夫の遺族年金が月6万円。月20万円くらいになるのだったら、仕事を辞めても十分、年金だけでも暮らしていけるなと思っていたんです」
しかし、そんな老後プランが一気に崩壊したといいます。自身の年金の手続きのために訪れた年金事務所。窓口の職員が、田中さんの年金記録を確認しながら説明を始めます。
「田中さんの場合、65歳からは自身の老齢基礎年金と、老齢厚生年金が支給開始となります。それに伴いまして、これまで受給されていた遺族厚生年金との『調整』が入ります」
(調整? どういうこと?)
「田中さん自身の老齢厚生年金の額は、月額で約8万円で、一方で遺族厚生年金は月額6万円ですね。田中さんの老齢厚生年金は、遺族厚生年金の額を上回っているので、この場合、ルールによりまして、遺族厚生年金は全額支給停止となります」
一瞬、何を言われたのか理解できず、言葉が出てこなかったといいます。何とか声を出そうとすると、自分の想像以上に大きな声になってしまったとか。
「うそ! 月20万円もらえるんじゃないんですか!」
田中さんの声が事務所中に響き渡り、説明をしていた職員も一瞬びっくりした様子でしたが、すぐに冷静さを取り戻し、「遺族年金は、65歳以降は自身の老齢厚生年金が優先される仕組みでして……」と、冷静にルールを説明。「年金月20万円の生活設計」が一瞬にして崩れ去った衝撃に、田中さんはただ座り込むしかありませんでした。