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増加する「熟年離婚」とシニアの出会い
厚生労働省『令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況』によると、離婚件数全体は減少傾向にあるものの、同居期間が20年以上の夫婦の離婚(いわゆる熟年離婚)は、3万8,756件発生しています。 これは、離婚全体の約21.5%を占めており、高い水準で推移しています。
かつては、定年退職後に夫が家で過ごす時間が増えることで、妻がストレスを感じて離婚を切り出す「濡れ落ち葉問題」などが指摘されてきました。 しかし、健一さんの事例のように、夫婦双方の関係がすでに冷え切っており、子どもの独立や定年といった区切りを待って、形式的な手続きを進めるケースも少なくありません。
また、注目すべきは離婚後の行動です。 健一さんが「マッチングアプリ」に登録したように、離婚後のシニア世代が、新しいパートナー探しに積極的になっている側面もうかがえます。
こうしたシニアの積極的な恋愛・婚活の動きは、タメニー株式会社が50~79歳の未婚男女に行った調査(2025年)でも裏付けられています。 同調査によると、「恋愛をしている」シニアは24.0%と昨年より増加し、過去5年で最高となりました。 「結婚相手・恋人が欲しい」と回答した人も22.9%にのぼり、ここ3年は増加傾向にあることが分かっています。
健一さんが「茶飲み友だち」「一緒に笑いあえる人」を求めたように、シニアの婚活は価値観を重視する傾向があります。 調査でも、シニアの約半数(49.6%)がパートナーに「刺激」よりも「安心感」を求め、「しっかり1人1人と向き合い、コミュニケーションを楽しむ」(45.8%)ことを望む人が多いという結果が出ています。
健一さんは「マッチングアプリ」というオンラインの手法を選びましたが、調査上ではシニア全体としてはオンライン(20.1%)よりも「対面」(29.8%)での活動を好み、「希望にマッチするお相手に集中する」(32.4%)傾向が強いようです。
また、健一さんが「70歳、80歳と年を重ねたとき」を意識したように、シニアのパートナー探しは現実的な視点に基づいています。 相手に求める条件として「健康状態」(62.7%)や「家族構成」「相手家族の介護の可能性」といった項目が重視され、経済状況を気にする理由も「老後の安心のため」が最多でした。
健一さんのように、定年や離婚を機に「第二の人生」のパートナーを求めるシニアにとって、婚活は将来の安心と日々の充実感を得るための、現実的かつ重要な選択肢となっているようです。
[参考資料]
厚生労働省『令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況』