詐欺事件発生、被害額は――そんなニュースを目にするたびに、「なぜ、騙されるんだろう」「自分は決して騙されない」と誰もが思います。それは実際に被害にあった多くの人たちもそうでした。ある男性のケースをみていきます。
もう1円も残ってない…〈貯金3,000万円〉〈年金月20万円〉69歳元公務員、悠々自適の老後のはずが「預金通帳」を見て泣いた夜 (※写真はイメージです/PIXTA)

増加する高齢者被害「自分は大丈夫」の過信が招くリスク

警察庁の発表によると、令和6年(2024年)における特殊詐欺の認知件数は2万1,043件で、前年比10.5%増加しました。被害総額も前年比58.8%増加し、718.8億円となりました。そのうち65歳以上の高齢者の被害認知件数は1万3,738件で、前年より減少しています。しかし、法人被害を除いた総認知件数に占める高齢者の割合は依然として65.4%と高く、被害に占める高齢者の割合はなお高い水準です。

 

被害者を欺罔する手段として犯行の最初に用いられたツールは、電話が79.0%、メール・メッセージが10.0%、ポップアップ表示が8.8%、はがき・封書等が2.2%でした。手口も巧妙化しており、従来のオレオレ詐欺や還付金詐欺に加え、SNSを通じた投資詐欺(SNS型投資詐欺)やロマンス詐欺なども急増しています。

 

大切な老後資金を守るために、改めて「元本保証」「あなただけに」「絶対に儲かる」といった甘い言葉は、詐欺を疑うことが鉄則です。電話やメール、SNSなどで儲け話を持ち掛けられた場合は、それがどれほど魅力的に見えても、決して鵜呑みにしてはいけません。

 

そして最も重要なのは、高額な送金や契約を求められた際、その場で即決しないこと。「家族に相談する」「少し考えさせてほしい」と一度立ち止まり、必ず身近な家族や友人、あるいは警察の相談専用電話「#9110」や「消費者ホットライン(188)」といった公的な機関に相談する勇気を持つことが、被害を未然に防ぐ最大の防御策となります。

 

[参考資料]

警察庁『令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)』