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退職金2,200万円と「月12万円」の年金。描いたセカンドライフ
田中健一さん(65歳・仮名)。5年前、60歳で定年を迎えたとき、再雇用で契約社員として働くかどうか、選択に迫られました。田中さんは迷わず、定年退職の道を選びました。
勤めていた会社は地元の有名企業。退職金制度も厚く、実際に受け取ったのは2,200万円ほど。独身で身軽だったこともあり、悠々自適なセカンドライフを描いていました。
「年金は将来的に17万円ほど受け取れる予定でしたが、仕事を辞めて無収入になるのは少々不安だったので、もう受け取ってしまおうと思いました。30%ほど減ってしまいますが、収入ゼロでストレスを感じるよりもずっといいだろう、という判断です」
月12万円ほどの年金。預貯金に退職金を加えれば、3,000万円を超えます。10年前に購入したマンションのローンの残りを払ったとしても、2,000万円近く残ります。持ち家で、十分な貯蓄もある――何も心配することはない。そのはずでした。
定年退職から3ヵ月ほど経ったころ、90歳近い両親が相次いで体調を崩し入院。その後、介護付き老人ホームに入居することになったのです。
「あまりにバタバタしたので、きちんと吟味したわけではなく、とにかく入ることのできるところを選びました。両親の年金や預貯金を考えると、ちょっと身の丈にあっていなかったかもしれない」
そう振り返る通り、入居一時金や、施設利用料は親の年金や預貯金だけでは足りず、健一さんが身を削ることに。毎月10~15万円、貯蓄から取り崩す。他にも医療費や日用品費がかさむことも。また当初は一時的な入居と考えていたようですが、介護期間は想定を大きく上回ったといいます。
結局、両親の介護生活は、田中さんが65歳になる直前までの約4年間続きました。相次いでご両親が亡くなり、介護の負担からはようやく解放されました。しかし、65歳になった田中さんの貯蓄は半分程度に減ってしまったとか。そして年金は、生涯変わらず(額面)月12万円のまま。
「介護が終わった今、ようやく自分の老後が始まりましたが、この減額された年金と、想定外に減ってしまった貯蓄では、老後を楽しむ余裕すら生まれない。このままで私は大丈夫なのでしょうか……」