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偏差値から「年収」「役職」へ。モノサシが変わっただけのマウント合戦
高校の同窓会に20年ぶりに参加したという、武藤直樹さん(45歳・仮名)。通っていたのは、中高一貫の進学校。そこは、偏差値や模試の順位、そして最終的にはどの「一流大学」に合格したかで、生徒間の序列が暗黙のうちに決まるような世界だったといいます。
そんな環境で6年間を過ごした武藤さんは、その後、東京の有名私大に進学。大学卒業後は都内の中堅メーカーに就職し、現在は課長職として月収55万円ほどの給与を得ています。
「世間的には決して低い水準ではないと自負していますが、高校時代の同級生らが勤めている会社に比べたら見劣りするかもしれませんね」
そのようななか、武藤さんのもとに同窓会の案内状が届きます。懐かしさ半分、面倒くささ半分。学生時代のあの独特な「探り合い」の空気を思い出し、気は進みませんでした。しかし自分も旧友も社会人になり20年ほど。もうあの頃のような独特の雰囲気にはならないだろう、旧交を温めるのも悪くないはずだと参加を決意したといいます。
同窓会会場は、地元で老舗ホテルのバンケット。そこには見覚えのある顔ぶれが――しかし、和やかな再会の場を想像していた武藤さんの期待は、すぐに裏切られます。
「お、久しぶり。今どこだっけ? 俺はA(外資系コンサル)だよ。まあ、キツいけど、やりがいはあるかな」
「こないだ、湾岸のタワマン買ったんだよ。やっぱり高層階は違うね。武藤は今、どの辺に住んでるの?」
あちこちで交わされる名刺交換は、まるで互いの「現在の価値」を査定しあう儀式のようでした。話題の中心は、勤務先の企業名、役職、そして住んでいる場所――学生時代、あれほどまでにこだわっていた「偏差値」や「大学名」は、今や「年収」や「社会的地位」という、より生々しいモノサシに取って代わられていただけでした。
学生時代とまったく変わらない、マウント合戦の構図。一流大学の合格実績を競い合っていたあの頃から、何も変わっていませんでした。
「こんな大人になっても関係性は変わらないんですね……」
自分の月収55万円という現実が、この場においてどのような「評価」を受けるのか。そんなことを一瞬考えてしまったことにも嫌気が差したといい、誰にも告げず、そっと会場を後にしたといいます。