都会の喧騒から離れて暮らしたいと願いつつも、老後の利便性に不安を感じて踏み切れないシニア層が増えています。月に23万円の年金を受け取り、退職金と貯金を合わせて4,000万円の資産を持つ堅実さん(仮名・65歳)夫婦は、極端な田舎暮らしを見送り、生活基盤の整った地方都市を選択しました。結果として、生活水準を落とすことなく無理のない移住生活を成功させた、60代夫婦の事例を紹介します。
「定年後は古民家に住んで畑でもやりたい」〈年金月23万円〉65歳男性の夢を一刀両断した妻のファインプレー。地方移住で“快適な老後生活”を叶えられたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「地方移住」の理想と現実のバランス

堅実マモルさん(仮名・65歳)は、長年勤めた都内の企業を定年退職したのを機に、妻のシズカさん(仮名・65歳)と地方移住を果たしました。退職金とこれまでの貯金を合わせた資産は約4,000万円。年金は夫婦合わせて毎月約23万円を受け取っており、経済的な不安はそれほどありませんでした。

 

マモルさんは当初、「定年後は古民家に住んで、のんびり畑でもやりたい」と夢を語っていましたが、現実的なシズカさんに「雪かきや草刈りは誰がやるの? もし車に乗れなくなったらどうやって病院に通うつもり?」と諭されたといいます。

 

以前、知人が自然豊かな山間部に移住したものの、冬の厳しい寒さや屋根の雪下ろしに耐えきれず、数年で体を壊して都会に戻ってきたという失敗談を聞いていたこともあり、「テレビで見るような自給自足生活は、体力が落ちていく老後にはリスキーすぎるか……」と、マモルさんは考えを改めました。

 

最終的に選んだのは、県庁所在地からほど近い地方都市の中古マンション。購入価格は1,500万円。都会に比べて住居費を大きく抑えながらも、徒歩10分圏内に大型スーパーや総合病院、市役所の出張所などがすべてそろっている、非常に利便性の高い立地です。

 

「一軒家だとご近所付き合いや地域の行事が大変そうだけど、マンションなら気楽ね」とシズカさんも賛成しました。

 

地域特有の面倒な家の周りの雪かきや草刈り、さらには濃密な町内会のしがらみや行事への参加を、管理費を払うことで最小限に抑えられると考えたからです。

都会と自然のいいとこ取り生活を満喫

移住から2年が経過しましたが、堅実さん夫婦の生活は順調で、思い描いていた通りのセカンドライフを送っています。

 

「ちょっとお醤油を買ってくるわね」と、シズカさんは思い立ったときに歩いて数分のスーパーへ出かけていきます。日常の買い物や通院はすべて徒歩圏内で完結するため、将来的に車の運転に不安を感じる年齢になって免許を返納したとしても安心です。

 

一方で、週末に車を30分走らせれば、すぐに美しい海や山に出かけられます。休日は夫婦で日帰り温泉を巡ったり、道の駅で新鮮な地元の野菜や魚を安く買ったりと、都会では味わえなかった自然の恵みを楽しんでいます。

 

当初は「知らない土地のコミュニティに馴染めるかしら……」と不安を抱えていた妻のシズカさんも、都市部と変わらない生活水準が保たれていることにすっかり満足しています。懸念していたご近所付き合いも、マンションの住民同士で会釈を交わす程度の適度な距離感が保たれており、人間関係のストレスを感じることはありません。

 

「不便な暮らしをしていたら、きっと毎日の生活を回すだけで精一杯で、妻と笑い合う余裕なんてなくなっていたと思います」とマモルさんは語ります。

 

過度な自然や物価の安さに飛びつくのではなく、老後の安心とインフラを最優先に考えた「地方都市のマンション」という選択が、堅実さん夫婦のセカンドライフを豊かで余裕のあるものにしています。