なぜ、話の飲み込みが早い人と、何度説明しても理解できない人がいるのでしょうか? その差を生むのは、単なる知識量ではなく、「認知力(分かる力)」、つまり情報を頭の中でイメージし、意味を再構築する力だそうで……。本記事では、船津洋氏著『「地頭力」を鍛える子育て:自ら学び、考える力がアップする確かな方法』(大和出版)より、「地頭力」の土台となる認知力と言語の関係を解き明かします。
この犬の写真、どう説明する?「地頭がいい子」とそうでない子の“決定的違い”を生む、言語化能力の壁 (※写真はイメージです/PIXTA)

概念を知らないと言語化はできない

重要なことは、概念を知らないと組み合わせの材料がないので、理解しきれないということです。犬を知らなければ、写真を見ても意味内容を理解しきれません。頭の中で意味を伴った言語化ができない、ということです。

 

たとえば、「家の隣で、四つ足で歩く生き物が、お皿のようなものをくわえて走っている」といった表現になるでしょう。「知覚」された概念群は、言語を伴って「理解」されるのです。視覚からの情報は境界がはっきりしているので、その概念の存在と名前を知っている限り知覚は容易です。それで言えば、文字も境界がはっきりしていますね。

 

他方、聴覚からの情報は少し厄介です。言葉は音声が連続しているため、区切りが明確でなかったり、一部の情報が省略されたりしている場合があります。よく、「説明されたけれど、何を言われているのかまったく理解できなかった」という人がいます。もちろん説明する側に不備がある場合も多々ありますが、大抵の場合、聞いたことを頭の中で整理できていないから、理解できないのです。

 

反対に、聞いたことをスッと理解できる人は、頭の中でその情報をイメージすることに成功しているのです。それを「心内表象化」といいます。これは、外的に与えられた表現を通して、物事の本質や意味を、頭の中でイメージとして再構築する認知的な働きです。心内表象ができて、はじめて、正しく思考することができるようになります。

 

認知力(「分かる力」)を概観しましたが、特に言語を媒介とした認知は人が人である所以です。認知力に関しては、高いに越したことはありません。高ければ高いほど、多くの情報を知覚し、正確に意味内容を理解できるようになります。さらには深い思考が可能となります。もちろん、論理的に正しい、あるいは好ましい判断もできるように成長します。

 

次にご説明する非認知力の中で、状況に適した判断力、リーダーシップ、コミュニケーション能力、あるいは主体性などは、認知力が土台になります。地頭力を育てるにあたって、認知力を高めることの重要性は心に留めておきましょう。

 

 

船津 洋

株式会社児童英語研究所

代表取締役所長