小学校受験でほぼ必ず出題される「お話の記憶」。なぜ子どもたちは、一度聞いただけの長い物語の内容を正確に答えられるのでしょうか? 実は、それは単なる暗記力ではありません。本記事では、船津洋氏著『「地頭力」を鍛える子育て: 自ら学び、考える力がアップする確かな方法』(大和出版)より、「本当の理解」につながる記憶のメカニズムを解き明かします。
地頭がいい子が持つ「力」の正体がわかる…お受験でほぼ必ず出題される「丸暗記」では絶対解けないペーパーテスト (※写真はイメージです/PIXTA)

心内表象化された内容を心に長期記憶する「エピソード記憶」

以降は、特に小さいお子様を持つ読者の皆様の関心事でしょうし、読者の皆様も思い当たる節があるのではないでしょうか。小学校受験を体験されたことのあるご家庭では「お話の記憶」という試験の項目をご存知かもしれません。

 

これは話された内容を記憶して、その内容に対する設問に答えるという形式の試験です。学校にもよりますが、短いものでは2、3の文からなる短いお話です。

 

「おさるさんと、ぞうさんとねずみさんがいました。テーブルにはりんご、バナナ、いちごがあります。おさるさんはバナナ、ぞうさんはりんご、ねずみさんはいちごを食べました。」

 

このような地の文に対して、

 

「テーブルにあった食べ物はなんでしょう」

「ぞうさんは何を食べましたか」

 

などという質問がなされます。ちなみに右の文は100文字にも満たないので、記憶で対応できるかもしれません。しかし、一般的には200~400文字程度の長さがあります。また、長いものだと600字、あるいは1000字を超えるようなストーリー展開がなされるそうです。1000字ともなると、これは記憶していては追いつきません。ここで、必要になるのが「エピソード記憶」です。

 

以下に、サンプルの文と問題を載せます。実際の試験では、子どもたちは放送で流れる文を聞いて、回答することになります。子どもたちの疑似体験のつもりで、一度声に出してゆっくり目に読んでみて、その後、地の文は見ずに、後ろの問題に答えてみましょう。

 

(以下は、都内の小学校の入試問題を参考にしてAIで生成したものに、筆者が修正を加えたものです)

 

「晩ごはんのおつかい」

今日は金曜日。学校から帰ったさやかちゃんは、お母さんに頼まれて、晩ごはんのカレーに使うやさいを買いに行くことになりました。

 

お母さんから渡されたメモには、「じゃがいも3つ」と「玉ねぎひとつ」と書いてあります。「夕方5時には帰ってきてね」とお母さんに言われて、さやかちゃんは赤地に小さな黄色い星のマークが付いているリュックを背負って家を出ました。

 

家の前の道をまっすぐ進むと、最初に見えるのは、道の角にある郵便局の、大きな赤いポスト。その角を左に曲がって、2つ目の信号を渡ったところにある八百屋さんが目的地です。

 

道の途中で、ピアノ教室から出てきた友達のまいちゃんに会いました。まいちゃんは白いレッスンバッグを持っていて、「これから駅ビルでプリンを買うんだ」と言いました。

 

八百屋さんの手前で、さやかちゃんは麦わら帽をかぶった知らないおじさんに「このへんに交番ありますか?」と聞かれました。おじさんは地図を見せながら困った顔をしていました。さやかちゃんは「あの角の郵便局の反対側にありますよ」と答えると、「ありがとう、助かったよ」と言われました。

 

お店について買い物のメモを探すとポケットにもリュックにも入っていません。さやかちゃんは少し慌てましたが、すぐにメモの内容を思い出して、じゃがいも3つと玉ねぎをかごに入れました。

 

お金を払って外に出ると、空は夕焼けでほんのりピンク色に染まっていて、ビルの窓ガラスがきらきら光っていました。さやかちゃんは、「はやく帰って、カレーが食べたいな」と思いながら、帰り道を歩き始めました。(文字数:655字)