夫や妻に万が一のことがあった時、遺された家族の生活を支える遺族年金。多くの人が「ある程度はもらえるだろう」と漠然と考えているかもしれませんが、その認識は本当に正しいでしょうか。働き方が多様化する現代、かつての社会を前提とした制度との間に乖離が生まれ、想定外の少額支給となるケースも少なくありません。
68歳夫を突然亡くした68歳妻…年金事務所で知る「遺族年金・月700円」に絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

驚くほど少ない「遺族年金」…もはや他人事ではない

遺族厚生年金の制度は、妻が専業主婦というのが多数派だった時代に作られた名残があり、現代の働き方と乖離が生じている面があります。

 

遺族厚生年金の基本的な考え方は、「亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4」が支給されるというもの。また65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある場合は、「①亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4」と「②亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の1/2と、自身の老齢厚生年金の額の1/2を合算した額」を比較し、高いほうが遺族厚生年金額として採用されます。さらに「A:亡くなった方の遺族厚生年金額」、「B:自身の老齢厚生年金額」の2つを比べ、Bは全額支給され、AがBを上回る場合のみ、その差額分が遺族厚生年金として上乗せ支給されます。

 

真辺さん夫婦の場合、同じようなキャリアを歩んできたふたりは、共に年金月17万円ほどで、明夫さんが若干多かったそうです。基礎年金が月7万円とすると、厚生年金部分はそれぞれ月10万円ほど。計算上、恵子さんが受け取る遺族厚生年金額と、自身の老齢厚生年金額を比較した際、微妙な差額が700円ほどあり、手続き後、その差額が恵子さんの年金に上乗せされて支給されるといいます。

 

「さすがに700円といわれたときには言葉を失いました。意味がまったくわからず……共働きだと損をした気分になる制度ですね」

 

総務省統計局『労働力調査(詳細集計)』によると、2024年、夫、妻ともに非農林業雇用者である世帯=「共働き世帯」は約1,300万世帯。対して、夫が非農林業雇用者で妻が非就業者(非労働力人口と失業者)=「専業主婦世帯」は、508万世帯。圧倒的に共働き世帯が多くなっています。ただ夫・妻とも就業時間が「週35時間以上」なのは496万世帯。まだ「男は仕事、女は家庭」という傾向が強いことがわかります。

 

前時代的な制度だといわれることも多い遺族年金ですが、その乖離が解消されるまでは、もう少し時間がかかりそうです。

 

[参考資料]

日本年金機構『遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)』

総務省統計局『労働力調査(詳細集計)』