夫や妻に万が一のことがあった時、遺された家族の生活を支える遺族年金。多くの人が「ある程度はもらえるだろう」と漠然と考えているかもしれませんが、その認識は本当に正しいでしょうか。働き方が多様化する現代、かつての社会を前提とした制度との間に乖離が生まれ、想定外の少額支給となるケースも少なくありません。
68歳夫を突然亡くした68歳妻…年金事務所で知る「遺族年金・月700円」に絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

同い年の夫を襲った「遺族年金」の落とし穴

真辺恵子さん(68歳・仮名)。先日、同い年の夫、明夫さん(享年68歳・仮名)を突然の脳梗塞で亡くしました。

 

「夫はずっと愛煙家だったんですが、仕事を辞めたのをきっかけに煙草をやめていました。野菜を中心とした食事にしたり、雨の日以外は一緒にウォーキングしたり……健康には気を遣っていたんですが」

 

2人の出会いは、大学新卒時にさかのぼります。何百人といた同期だったとか。3年ほどの交際を経て結婚し、娘二人をもうけました。妊娠したとき、恵子さんは仕事を辞めるのも選択肢のひとつと考えていましたが、明夫さんの「これからは女性も活躍する時代。仕事はやめないほうがいい」という言葉を受けてキャリアを続行。明夫さんも子育てには積極的に参加してくれたおかけで、仕事と家庭の両立ができたといいます。

 

「今であればイクメンと呼ばれていたんでしょうね。でも、当時は『男が家事なんて』と、冷たい目で見られることもあったようです。それでも、家庭を大事にしてくれた夫には、本当に感謝しかない」

 

共に仕事と家庭に全力だったからこそ、老後は「一緒に長生きしよう。楽しい時間をたくさん過ごそう」と約束。そのため、健康を第一と考えていたのだとか。

 

「まさか、こんなに早く、ひとりになるとは思ってもいませんでした」

 

突然のことで茫然自失。現実として考えられるようになったのは、葬儀から2週間ほど経ってから。それからは何もやる気が起きず、やっと最近になって外に出かけるようになったそうです。たまりにたまった手続きをコツコツとこなす毎日が続いていますが、そのなかで、衝撃を受けることもしばしば。

 

「年金の手続きに行ったときはビックリしましたね。世間知らず、と言われたらそれまでですが」

 

何にビックリだったかというと、手続きで年金事務所を訪れた際に聞いた「概算の遺族年金額」。その額、およそ700円だったといいます。