日本年金機構から送られてくる「赤い封筒」。それを無視した先に待つ「恐ろしい出来事」とは、決して他人事ではありません。年金保険料の滞納が、最終的にどのような事態を招くのか。本記事では、年間2万6,000件以上で発生している財産差し押さえの深刻な実態と、そうなる前に知っておくべき公的な救済制度について詳しく解説します。
日本年金機構「168,456件」に赤い封筒で最終警告も…ガン無視した「26,797件」に訪れた「恐ろしい出来事」 写真はイメージです/PIXTA

国民年金保険料の滞納…「差し押さえ」は他人事ではない

田中さんのように、国民年金保険料を滞納し、最終的に財産を差し押さえられるケースは決して珍しくありません。厚生労働省によると、令和6年度に最終催告状が送られたのは168,456件。これを無視して督促状が送付されたのは99,962件。それでも納付がなく、財産の差し押さえに至ったのは26,797件でした。最終催告状を受け取ったケースのうち、約6件に1件が実際に財産を差し押さえられている計算になります。

 

差し押さえの対象となる財産は預貯金に限りません。給与の一部、自動車、不動産など多岐にわたります。会社員のように給与から天引きされる厚生年金と異なり、自身で納付する必要がある国民年金は、つい納付を忘れたり後回しにしたりしがちです。しかし、納付は国民の義務であり、滞納を続ければ国の強制力をもって財産を徴収される可能性があるのです。

 

ただし、保険料を滞納してすぐに催告状が届くわけではありません。現在の対象は、控除後所得が300万円以上あり、かつ7ヵ月以上保険料を滞納している人です。しかし、この基準は今後引き下げられる可能性が高く、「収入が低いから大丈夫」と考えるのは早計でしょう。

 

重要なのは、経済的な理由で納付が困難な場合に決して放置しないことです。国民年金には、保険料の納付が全額または一部免除されたり、納付が猶予されたりする「保険料免除・納付猶予制度」があります。失業や事業不振、災害といったやむを得ない事情で収入が著しく低下した場合、この制度を利用すれば、将来受け取る年金額への影響を抑えつつ、合法的に保険料の負担を軽減できるのです。

 

「滞納していたんで、延滞金もとられましたよ。もったいない。でも面倒なことに巻き込まれるよりはマシかな」

 

[参考資料]

厚生労働省『令和6年度の国民年金の加入・保険料納付状況を公表します』