世帯年収1,000万円を超えているけど、なぜか貯蓄ができない。実は、このような家庭は決して珍しくありません。「贅沢しているつもりはないのに……」その感覚こそ、無意識のうちに家計を食い潰す危険なサインです。収入が増えるほど支出も膨らむ、高所得世帯が陥りがちな構造的な罠の正体と、その負の連鎖を断ち切る方法をみていきます。
贅沢してるつもりはないのだが…〈世帯年収1,600万円〉タワマンに住む・45歳パワーカップル。〈貯金ゼロ〉が常態化する「恐ろしい習慣」 (※写真はイメージです/PIXTA)

高所得でも貯蓄ゼロは珍しくない。家計を蝕む「見えない支出」の正体

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)』によると、年収1,000万円から1,200万円未満の世帯のうち11.0%、年収1,200万円以上の世帯でも9.7%が、預貯金や有価証券といった金融資産を保有していない「貯蓄ゼロ」世帯であると回答。樋口さん夫婦のようなケースは、決して珍しいことではないのです。

 

高収入にもかかわらず、なぜ貯蓄ができないのか――総務省統計局『家計調査 家計収支編 2024年平均』をみていくと、年間収入が高い世帯ほど、消費支出に占める教育費や交際費、外食を含む食費などの割合が高くなる傾向が見られます。収入の増加に伴い、子どもの教育や人付き合い、日々の食事など、あらゆる面で支出の基準額が引き上げられていくのでしょう。

 

まさに「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」という、いわゆる「パーキンソンの第2法則」が働くのです。高所得であるという安心感が、一つひとつの支出に対する判断を甘くし、「これくらいなら大丈夫」という「見えない浪費」を積み重ねてしまうのです。

 

この負の連鎖を断ち切る第一歩は、「家計の見える化」。たとえばどんぶり勘定になっている家計を、家計簿アプリなどを活用し、何にどれだけ使っているのかを正確に把握することからスタートします。次に効果の大きい固定費の見直し。通信料金や保険料、サブスクリプションサービスなど、一度見直せば継続的な節約につながります。そして最も重要なのが、給与天引きや財形貯蓄、積立投資などを利用し、収入があった時点であらかじめ一定額を貯蓄に回す「先取り貯金」を習慣化することです。残ったお金で生活する仕組みを作ることで、無意識の浪費を防ぎ、着実に資産を形成していくことが可能になります。

 

「そんなこと、基本中の基本ですよね、恥ずかしい。でも、その基本を実践に移すことが意外と難しい……」

 

[参考資料]

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)』

総務省統計局『家計調査 家計収支編 2024年平均』