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すべては子どものため…高所得でも貯金ゼロの現実
都内のタワーマンションに暮らす、樋口大輔さん・千夏さん夫婦(共に45歳・仮名)。大手メーカーに勤務する夫と専門職の妻、いわゆるパワーカップルで、世帯年収は1,600万円にのぼります。私立中学に通う一人息子にも恵まれ、週末には家族で外食や小旅行を楽しむ姿は、傍目には誰もが羨む余裕のある暮らしに映ります。しかし、夫婦の思いは違うようです。
「贅沢をしているつもりはまったくないんです。それなのに、毎月収入がほぼ支出に消えていき、まとまった貯金ができていません」
彼らの支出の大部分は「息子の教育のため」という言葉に集約されます。月々10万円近い私立中学の学費に加え、大学受験を見据えた塾の費用が約5万円。さらに、将来の選択肢を広げるための英語塾やプログラミング教室にも通わせており、教育関連費だけで月20万円を超えます。
「周りも同じくらいかけていますし、息子の将来を考えれば当然の投資だと思っています」
周囲からは「余裕がある」と思われる旅行や食事も、「子どものために」が枕詞につくもの。「体験に勝るものはない」という信念から、行っているといいます。
さらに負担なのが35年ローンで購入した住居費。夫婦それぞれの職場での付き合いや、子どもの学校関係での家族ぐるみの交際費もかさみます。普段の食事に対してもこだわりがあります。
「共働きなので、冷凍食品なんかに頼ることも多いのですが、それでもできるだけ質の高いものを食べてもらいたい」
値は張るものの、オーガニックをうたうものを揃えているという二人。食費は自然と高くなります。これもすべて「息子のため」。そんな樋口さん夫婦の家計は「収入=支出」といったもので、夫婦の口座残高はいつもギリギリの状態だといいます。
「コツコツと資産形成を進めていく必要がある。頭ではわかっているのですが、現実には難しくて……」
子どものためという言い訳のもと、一度生活水準を上げてしまった樋口さん夫婦。一度上げたレベルを下げるのは、想像以上に難しいことは誰もが知るところ。具体的な改善策を見出せないまま、時間だけが過ぎていくのでした。