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母にすがる45歳の出戻り長男
萩原京子さん(74歳・仮名)。3年前に夫を亡くしてからは1人暮らし。月12万円の年金と、亡夫の遺産である貯金1,500万円を頼りに、穏やかな日々を過ごしていたといいます。
そんな生活に暗雲が立ち込めたのは、長男・和樹さん(45歳・仮名)の離婚。仕事が長続きせず、ふらふらしている和樹さんに対し、ついに(元)妻がブチギレ。自宅を追い出された和樹さんは、半年ほどマンスリーマンションで暮らし、その間の話し合いの末に正式な離婚が成立。しかし、わずかな貯金も尽き、京子さんのところに泣きついてきたという顛末。
「なぜ、大学まで出ているのに、こんなに情けない人間になったのか……不思議でなりません」
離婚原因を本人と元義娘から聞いて、呆れるしかないという京子さん。しかし、悪夢はそれだけではありませんでした。
「母さん、悪いんだけど少しお金を貸してくれないかな。就職活動するにも先立つものが必要で……」
確かに、就職を考えるのであれば、ビジネススーツは必須。鞄も靴もネクタイも、揃えないといけません。「仕方がない」と思いつつ、10万円を渡しました。しかしお金の無心は月を追うごとに頻繁になり、金額も膨らんでいきました。
「スーツが1着だと無理。もう1着ほしい」
「面接が進んでいるところ、地方なんだ。宿代と交通費、貸して」
はじめは就職活動に関わることだから仕方がないと思い、お金を渡していましたが、そのうち
「今日、友だちと食事にいくから、5,000円ほど貸してよ」
などと、就職活動以外のところでもお金をせびるようになったといいます。さすがにそこまでは、と思い断ろうとすると、「お願いだ、見捨てないでくれ。俺にはもう母さんしかいないんだ」と涙ながらに訴えかける。そんな息子の姿に、京子さんの心は揺らいでしまったといいます。
「私が助けなければ、この子はダメになってしまうのではないか。そう思ってしまって」
子を思う親心。最初は和樹さんも少しは遠慮があったかもしれませんが、最近は「親なのだから当然」とのごとく、態度も横柄になってきたといいます。
「あの子が帰ってくる前は、年金の範囲でやりくりして、貯金に手を付けることはなかった。それが今は毎月、毎月おろさないとやっていけない。加速度的に減っていく貯金を前に、自分の老後どころか、息子と共倒れになるかもしれないという不安に襲われています」