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息子からの仕送りの申し出を断った72歳母
「物価が何でもかんでも高騰いるから、絶対困っていると思って『お金、送ろうか?』と言ったんです。そしたら、まさかの『お金なんていらん』と」
東京在住の寺本大輔さん(仮名・45歳)。地元で一人暮らしの母・幸子さん(仮名・72歳)が困窮しているのではないかと心配し、仕送りを申し出たところ拒否。余計に不安は募り、急なことでしたが仕事の合間を縫って1年ぶりに実家に帰省することを決意しました。
「明日帰るから」と伝えると、「帰ってきても大したご馳走ないよぉ」と幸子さん。大輔さんとしては、むしろ、いつもの様子を見ることができて好都合。「母の年金は月7万円ほど。生活に困っていないはずがありません」。しかし1年ぶりの帰省でみた幸子さんの姿は、想像を超えたものでした。
夕食の食卓には、新鮮で色鮮やかな野菜が溢れていました。「これは全部、近くの共同畑で採れたものだよ。近所の人たちと共同で育てて、収穫したものを分け合っているんだ」と幸子さんは話します。スーパーで売られているよりもみずみずしいキュウリやナス、トマトが並びます。
聞くと、野菜を買うことはほとんどなく、魚や肉を物々交換で手に入れることも珍しくないそうです。そのため食費は贅沢しても月1万円以下だといいます。
大輔さん、驚きはまだ続きます。電気代を抑える工夫として、電力会社の時間帯別料金プランを徹底的に活用し、電気を使うのは主に夜間。日中は地域の公民館や図書館で時間を過ごすことが多いそうです。それはただ節約のために“自宅外”で過ごすのではなく、積極的に地域活動に参加し、物々交換の相手は、このような活動で知り合ったのだとか。このような毎日を送っているためか、水道光熱費、通信費などを合わせても1万円強だといいます。
持ち家のため家賃などはかからず、年金月7万円でもお釣りがくるくらいだと、幸子さんは笑います。
「母の生活は、私が想像していた節約生活とは全然違いました。食費を切り詰めて暑くても我慢というものではなく、人と繋がり、工夫して、充実した生活を送っている。私なんかよりもずっと豊かな暮らしをしていました」
一体、いつからこんな暮らしを?
「ずっと前からよぉ。あんた帰ってきてもすぐに東京戻るから、わからんかったね」