長年、家族として深い絆で結ばれていたはずなのに、その思いは実は一方通行だった――そう思い知らされるケースも珍しくありません。突然、ふっと浮上する離婚話。「自分は関係ない」と言えますか?
娘の晴れ姿を涙で見つめる夫の隣で…子の結婚式の翌朝に起きた「まさかの大事件」。妻のいないリビングで見つけた「一通の封筒」に夫、絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

「妻の沈黙」=不満なしではない

厚生労働省『令和4年度 離婚に関する統計の概況』によると、離婚件数全体に占める、同居期間20年以上の夫婦の離婚の割合は21.5%。これは、5組に1組以上の夫婦が、長年連れ添った末に別れを選んでいることを示します。

 

また、裁判所『司法統計(令和4年)』によると、妻が離婚を申し立てる動機として、「性格が合わない」が最も多いものの、次いで「精神的に虐待する」が上位に入ります。小林さん夫婦の場合、民法770条1項に記された典型的な離婚事由には当たりません。ただし、妻側の主張は「夫によって夢や挑戦の機会を否定され、精神的に抑圧された」「妻として自分らしく生きることができない」というものであり、これは法律上「婚姻を継続し難い重大な事由」(5号)にあたる可能性もあります。

 

もし調停・裁判に進めば、法定事由(民法770条1項)に基づき判断されるでしょう。争点は「夫婦の信頼関係が破綻しているかどうか」。妻は「夢を阻まれたことで精神的に生きづらさを感じ、婚姻を継続できない」と主張するでしょう。これは、価値観の不一致、夫による精神的な抑圧、信頼関係の破綻と評価され得ます。

 

「妻は何も不満を言わなかった」。そう語る夫は少なくありません。しかし、それは決して現状に満足していたわけではないのです。期待することを諦め、関係に見切りをつけ、自立への準備を進めているサインなのかもしれません。

 

「妻が、どれほど強く離婚を望んでいるのか――計り知れないところがあります。私もこれまでを振り返って、色々と整理したいと思っています」

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度 離婚に関する統計の概況』

裁判所『司法統計年報(家事事件編)令和4年』