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リストラ…20代は転機、60代は例外なき減少
終身雇用制度が実質的に崩壊し、産業構造の転換が加速する現代の日本において、企業の事業再編に伴う人員整理は他人ごとではありません。特に近年、大手企業による早期退職優遇制度の拡充や事業売却に伴う人員整理のニュースが後を絶たず、個人のキャリアにおける安定の定義は根底から覆されようとしています。そのようななか、株式会社CAREER FOCUSは、リストラ(人員整理)を経験した全国の男女450名を対象にキャリアの追跡調査を実施。それまで見えてこなかった、リストラ経験者がその後、どのようなキャリアパスを歩み、経済的・心理的にどのような変化を経験するのかが見えてきました。
まずリストラ後の年収変化を年代別に分析した結果、年齢によってまったく違う景色がみえてきました。
▼20~25歳
76.9%が年収増加。年収が減少したのはわずか7.7%にとどまりました。若年層にとってリストラは、むしろより良い条件の職を得るためのポジティブな転機としても機能していることが示唆されます。
▼45~49歳
56.2%が年収減少。年収が増加したのは31.2%でした。豊富な実務経験を持つはずのミドル層、社会の中核を担うべき世代が、キャリアの「下り坂」を強制される転換点となっている現実が明らかになりました。
▼60歳以上(60~64歳および65歳以上)
100%(調査対象者全員)が年収減少。年収が増加、あるいは維持できた者は一人もいませんでした。これは、スキルや経験以前に「60歳以上」という年齢要素だけで大幅な経済的下方移動を強いられることを示す、衝撃的なデータです。
キャリア形成における年齢の壁はミドル・シニア層になるにつれて極端に高くなり、特に60代以降では、再就職がそのまま大幅な経済的下方移動を意味するのです。
リストラがもたらす経済的打撃は極めて深刻です。調査によると、全体の41.3%、実に5人に2人が年収減少を経験しています。さらに深刻なのは、その減少幅です。年収が減少した層のうち、27.3%が「30%以上の大幅な収入減」に見舞われていました。
これは、単なる生活水準の切り下げに留まらず、住宅ローンの返済計画の破綻、子どもの教育機会の断念など、生活基盤そのものが崩壊しかねないレベルの経済的インパクトを意味します。
再就職に至るまでの道のりもまた、決して平坦ではありません。再就職活動にかかった期間は、平均して4カ月を超えています。詳細を見ると、「1~3カ月」で再就職できた層が45.3%と最多である一方、「6カ月~1年」が28.7%、「1年以上」もしくは「現在も活動中」が9.3%と、合計で38%もの人々が半年以上の長期にわたる無職期間を経験しています。
この長期化の背景には、当事者の悲痛な声が示す通り、スキルや経験以前の「見えない壁」が存在します。
このように、年齢による足切りを示唆する証言が寄せられています。
このように、リストラそのものが再就職の際の心理的・選考上の大きな壁となっている実態も浮き彫りになりました。
リストラがもたらす影響は、経済的なものに留まりません。調査によると、対象者の75%以上が、リストラ通告時に深刻な精神的ダメージを経験したと回答しています。その内訳は、「将来が不安になった」(34.8%)が最も多く、次いで「怒りを感じた」(25.9%)、「あきらめの境地になった」(15.4%)と続きます。予期せぬ形でキャリアを中断させられることは、個人の尊厳を深く傷つけ、未来への希望を著しく毀損する体験であることを物語っています。