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息子の借金…安易な肩代わりが悪夢の始まり
大手企業を勤め上げ、退職金を含め6,000万円の貯蓄を確保。月20万円の年金収入もあり、老後の生活に何ら不安はなかったはずでした。佐藤隆さん(仮名・72歳)の人生設計が狂い始めたのは、一本の電話からでした。
「大樹さんの友人ですが、貸したお金を返してもらえなくて困っているんです」
最初は耳を疑いました。ひとり息子の大樹さん(仮名・42歳)は真面目な会社員で、金銭トラブルとは無縁だと信じていたからです。しかし、帰宅した息子を問い詰めると、青ざめた顔で「ギャンブルで作った借金だ」と白状しました。そして、その友人から借りたお金は氷山の一角に過ぎなかったのです。
「ギャンブルで作った借金は、ギャンブルじゃないと返せない、と……そうやってどんどん借金が増えていくんですね。本当に、病気ですよ」
知人からはもちろん、複数の消費者金融からも借り入れを重ね、総額は1,000万円を超えるほどに膨れ上がり、完全に首が回らない状態に陥っていました。
「もう自分ではどうにもできない。もう終わりだ! もう終わりだ!」
涙ながらに訴える息子を前に、佐藤さんは強いショックを受けました。世間体を気にする気持ちと、息子の将来を案じる親心から、「すべてを清算してやり直せ」と、借金の全額を一度は肩代わりすることを決意したのです。
しかし、その一度きりの約束が、悪夢の始まりでした。借金を清算したはずの息子は、ギャンブル依存から抜け出せず、再び消費者金融に手を出し始めたのです。佐藤さんの知らないところで借金は雪だるま式に膨れ上がり、次に督促状が届いたときには、再び1,000万円を超えていました。誰にも相談できず孤立した大樹さんは、「人生を変えたい」という焦りから、さらに借金を重ねるという典型的な悪循環に陥っていたのです。
「ふざけるな!」と、怒鳴りつけたい気持ちを必死にこらえ、佐藤さんは再び息子の借金を肩代わりしました。「ギャンブル依存症は病気です。最初の私の対応がまずかった。このままでは、私たちも破産してしまいます」と後悔を口にする佐藤さん。大樹さんは、家族の勧めもあり、ギャンブル依存症のグループホームに入所し、依存症からの脱却を目指しているといいます。