(※写真はイメージです/PIXTA)
老後設計を揺るがす「家族リスク」という名の落とし穴
老後設計を考える際、多くの人は自身の健康や資産運用に目を向けがちですが、見落とされがちなのが「家族に起因する経済的リスク」です。
厚生労働省の調査研究(平成29年度)によれば、生涯でギャンブル等依存症が疑われる状態になったことがある人の割合は、成人の3.6%に上ると推計されています。
一方で、佐藤さんが築いた資産がいかに潤沢であったかは、公的な統計が示しています。金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和5年調査』によると、世帯主が70代の二人以上世帯における金融資産保有額は、平均2,188万円、中央値が1,100万円です。佐藤さんの4,000万円という資産は平均を大きく上回るものであり、本来であれば安泰な老後を送れるはずでした。
しかし、その盤石なはずの土台も、「家族リスク」の前ではいとも簡単に崩れ去る危険性をはらんでいます。「自分の子どもは大丈夫」「うちの家族に限って」といった根拠のない思い込みが、いかに危ういか、佐藤さんのケースを見れば明らかです。
家族が金銭的な問題を抱えたとき、愛情や世間体から安易に資金援助をしてしまうことは、根本的な解決を遠ざけ、かえって事態を深刻化させることが少なくありません。重要なのは、問題を個人で抱え込まず、専門機関へ繋ぐことです。ギャンブル依存症であれば精神保健福祉センターや自助グループ、多重債務であれば法テラスや消費生活センターなど、公的な相談窓口が存在します。
老後の生活を守るためには、自身の資産計画だけでなく、家族に潜むリスクにも目を向け、万が一の際には冷静かつ適切に助けを求めるという視点が不可欠なのです。
[参考資料]
厚生労働省『ギャンブル等依存症対策推進基本計画』
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和5年調査』