与えられた仕事はこなすが、それ以上は貢献しない「静かな退職」。4人に1人が「職場にいる」と答えるこの現象は、周囲に深刻な影響を及ぼします。特に仕事を押しつけられ疲弊する40代がいる一方、それを好機と捉え評価を上げる20代も。この世代間ギャップの正体と、誰もが幸福でいられる職場の条件を調査から解き明かします。
「静かな退職」で得する20代、疲弊する40代…職場で起きている「静かな世代間格差」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「静かな退職」…組織と個人、それぞれに求められる対応

周囲に静かな退職者がいても幸福感を保てる人は、どのような条件を備えているのでしょうか。調査が示すのは、「成長支援感」と「正当評価感」の2点。「会社は従業員の成長を支援している」と強く実感している人は、静かな退職者が周囲にいても幸福感が高い傾向にあり、驚くべきことに、成長支援を感じられる人は「周囲に静かな退職者がいない」人よりも幸福感が上回る逆転現象すら確認されました。

 

また「会社が従業員を正当に評価している」と答えた人も同様に幸福感が高い傾向にあります。周囲に静かな退職者がいても、自分が正当に評価されていると感じられるならば、心理的に健やかでいられるようです。これは、不利益の背景に「不公平感」があることともつながり、処遇や評価の透明性が、働きやすさを支える土台となっていることを裏付けています。

 

「静かな退職」という現象は新しい言葉で語られていますが、実際には昔から存在していたものです。一定割合で生じるのは自然なことであり、それ自体を完全に排除するのは現実的ではないといえるでしょう。

 

重要なのは、それを前提にしつつ職場環境をどう整えるか。組織にとっては、制度設計や日常的な対話を通じて、従業員が「成長を支援されている」「正当に評価されている」と感じられる仕組みを構築することが欠かせません。1on1面談やスキル研修などの仕組みを単なる制度にとどめず、現場で実感できる形にしていく必要があります。

 

同時に、個人側にも工夫が求められます。会社が用意した支援策や評価の場を積極的に利用し、自分のキャリアや働き方に取り入れていくことが、周囲の働き方に過度に振り回されないための手立てになるでしょう。

 

「静かな退職者」がいる職場は、一見すると停滞感や不満を連想させがち。しかし、今回の調査結果は、組織と個人の取り組み次第でむしろ幸福感を高めることも可能であることを明らかにしました。働き方の多様化が加速するなか、こうした知見をどう生かすかは、働く人たちにとって課題になっていきそうです。

 

[参考資料]

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ『「働く人の本音調査2025」第2回を発表』