(※写真はイメージです/PIXTA)
35年ローン完済、穏やかな生活のスタートのはずが…
「35年……長かったです」
閑静な住宅街に暮らす佐藤太郎さん(仮名・65歳)。大手メーカーで定年を迎えたのち、65歳まで働き続け、リタイア。現在は同期入社で知り合った妻・聡子さん(仮名・65歳)と2人暮らし。年金生活が始まるのと同じタイミングで、35年にわたる住宅ローンの返済が終了しました。
頭金として1,000万円を払い、残り4,500万円を借り入れ。月々13万円の返済は、決してラクではありませんでした。
「ローンを抱えている状態で収入が年金だけ、という状態は避けたかった。シミュレーション通り、65歳で返し終えることができて、本当によかった」
これからは、あまり手をかけてこなかった庭をキレイに整えたり、築35年、少々古くなった我が家をDIYでリフォームしたり……時間はたくさんあるので、とにかく穏やかな毎日を送ろうと思っていたといいます。そんなとき、長年、空き家だった隣の家に30代の若い夫婦と子どもが2人という家族が引っ越してきました。
「このあたりの分譲が始まったのが、40年以上前のこと。残ったのは年寄りばかりだから、若い人が引っ越してくるのは大歓迎。引っ越しの挨拶に来られた際も、感じの良いご夫婦で安心しました」と当時を振り返ります。
しかし、しばらくすると、佐藤さん夫婦の穏やかな日常は少しずつ崩壊し始めます。朝早くから響き渡る子どもの甲高い叫び声と、ドタドタと走り回る足音。昼夜を問わず、それは続いた。夜10時を過ぎても騒音は収まらず、ときには深夜に夫婦喧嘩の怒鳴り声が壁を伝わってくることもあった。
「私たちも子育てを経験しましたから、ある程度の生活音は仕方がないと我慢していました。でも、次第にエスカレートしていったんです」
騒音だけではなかった。ゴミ出しのルールは守られず、分別されていないゴミ袋が収集日の前日から出され、カラスが散らかすこともしばしば。庭木の剪定はまったく行われず伸び放題。佐藤さん宅の敷地にまで浸食し始めます。我慢も限界を迎え、聡子さんは、勇気を出して隣家の奥さんにやんわりと声をかけます。
「お子さん、いつも元気でいらっしゃいますね。ただ、夜だけもう少しだけ…静かにしていただけると、とても助かるのですが……」
すると、返ってきたのは予想もしない言葉だった。
「はぁ? うちには小さい子どもがいるんですから、仕方がないですよね?」
逆ギレともいえる強い口調で言い返され、聡子さんは言葉を失いました。この日を境に、隣人一家は佐藤さん夫婦と顔を合わせても挨拶すらしなくなったといいます。