複雑な日本の年金制度。しっかりと理解していないと、「受け取れると思っていたのに受け取れない」という一大事に直面することもゼロではありません。それは一家の大黒柱が亡くなったときに遺族が受け取れる遺族年金も同様。夫を突然亡くした65歳の女性のケースをみていきます。
遺族年金は夫の年金の4分の3だって…嘘だったの!? 65歳女性、年金事務所の職員から知らされた「年金の真実」に絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

「年金事務所に急げ」…古くからの友人からのアドバイス

佐々木由美子さん(65歳・仮名)は、最近、長年連れ添った夫・浩一さん(享年68)を突然の病で亡くしました。夫婦ともに正社員として働き続け、ようやく定年後の穏やかな生活を手に入れた矢先のことです。

 

「定年を迎えて、仕事を辞めたら、ゆっくりしようといっていたんです。一緒にしたいこともたくさんあったんです。それなのに……あっけなく逝ってしまいました」

 

悲しみに暮れる日々が続きましたが、当たり前のように日常は過ぎていきます。独立した子供たちがいるとはいえ、平均寿命を考えれば、あと20年近くはひとりで生きていかなくてはなりません。今後の生活設計をどうするか、しっかりと考えていかないといけないという現実がありました。

 

由美子さん自身も定年まで正社員として働いてきたこともあり、経済的に余裕はあるはず。それでも給与がなくなった今、何かと貯蓄を取り崩す機会があります。少額ではあるものの、預金通帳の引き出しの記録を見ては、「一人で生きていくのに、お金は大丈夫かしら」「いつか貯蓄が尽きることになったら」と不安を募らせていたといいます。

 

そんな由美子さんを支えたのが、古くからの友人の一人、智美さん(仮名)。夫をすでに亡くしているため、何かとアドバイスをくれたといいます。そのなかの一つが、「年金事務所に早く行きな。旦那さんがもらうはずだった年金の4分の3くらいは、遺族年金としてもらえるから」というもの。

 

浩一さんの年金は月18万円。由美子さんも同程度受け取っていました。18万円の4分の3なら13万5,000円になるはずで、総額30万円を超えます。(これだけあれば何の心配もない……)。そう思って、年金事務所の相談窓口で自分の番号が呼ばれるのを待ちました。

 

そして由美子さんの番に。しかし、そこで衝撃的な言葉を聞きます。

 

「簡易的な計算ではありますが、佐々木さんがお受け取りできる遺族年金はありません」

 

職員から告げられた言葉に、由美子さんは一瞬、何を言われたのか理解できませんでした。

 

「えっ、ゼロですか? 夫の年金の4分の3じゃないんですか?」

 

思わず聞き返すと、「はい、お受け取りいただけないかと……」と職員は申し訳なさそうに繰り返しました。

 

(智美が遺族年金は夫の年金の4分の3だって…嘘だったの?)