(※写真はイメージです/PIXTA)
「静かな退職」は幸福感を下げる一方、一部には恩恵も
近年、国内外で「静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉が知られるようになりました。与えられた業務をこなすことには真面目であっても、それ以上の努力や付加的な貢献は避ける――いわば「必要最低限の働き方」を指す概念です。
リクルートマネジメントソリューションズが実施した「働く人の本音調査2025」では、全国の正社員7,105名を対象に、周囲に「静かな退職者」がいるかどうかをヒアリングした結果、27.7%、つまりおよそ4人に1人が「いる」と回答しました。本人の意識や実態ではなく、あくまで共に働く人から見た感覚ですが、職場に一定割合で存在している現象といえるでしょう。
労働人口の減少や生成AIの普及など、働き方を取り巻く環境が急速に変わるなか、こうしたスタイルが周囲に与える影響は決して小さくありません。
調査によると、「同僚や上司に静かな退職者がいる」と答えた人は、いないと答えた人に比べて、主観的幸福感が統計的に有意に低いことが明らかになりました。職場で共に働く相手の姿勢が、自分自身の心理的充足感に影響を及ぼすことを示す結果といえるでしょう。
一方で、必ずしも悪影響だけではありません。静かな退職者がいると感じる人のうち、「不利益を受けた」と答えた割合は55.1%と半数を超える一方で、15.1%は「恩恵を受けた」と回答し、少数ながらポジティブな効果を感じる層も存在する点が特徴的です。
不利益として最も多く挙がったのは「仕事量が増えた」(47.7%)。処遇が十分に報われないとの声も自由記述で見られ、不公平感が不利益感を強めている様子がうかがえます。特に管理職層にその傾向が強く、部下のカバーや業務調整の負担が大きいことが背景にあると考えられます。
対照的に恩恵を感じる理由で最も多かったのは「相対的に自分の評価が上がった」(12.5%)。周囲が最低限にとどまるなかで努力を続けた結果、評価につながったと捉える人も少なくないのです。自由記述には「効率的な業務の進め方が共有された」「組織風土が変わった」といった声もあり、職場全体に波及する効果を肯定的にとらえるケースもみられました。
さらに調査結果を世代別にみると、30代・40代といった中堅層は不利益を感じやすい傾向が目立ちました。特に家庭やキャリアの両立に負担が増す年代にとって、同僚の業務態度が自分の労働負荷に直結することが影響しているのでしょう。
一方、20代では相対的に恩恵を感じた人の割合が高い傾向がみられました。若手社員にとっては、周囲の働き方が「自分の評価を引き上げるチャンス」や「成長の機会」に映りやすいのかもしれません。