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葬儀費用問題、公的制度と生前の備え
田中さんのようなケースは、決して特別なことではありません。親が高齢になり、自身も年金生活者となるなかで、突然訪れる親の死と、それに伴う金銭的な問題は、誰にでも起こりうる現実です。
株式会社鎌倉新書『第6回お葬式に関する全国調査』によると、葬儀にかかる費用の総額(飲食・返礼品含む)は全国平均で118.5万円にも上ります。これはあくまで平均であり、葬儀の形式によって費用は大きく異なります。
一般葬(会葬者を招く一般的な葬儀):161.3万円
家族葬(近親者中心で行う小規模な葬儀):105.7万円
一日葬(通夜を行わない葬儀):87.5万円
火葬式・直葬(儀式を行わず火葬のみ):42.8万円
田中さんが提案された「直葬」でさえ、約40万円が相場です。この費用をすぐに用意できない場合、どうすればよいのでしょうか。実は、費用負担を軽減するための公的な制度が存在します。
葬祭費支給制度
故人が国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入していた場合、葬儀を行った人(喪主)に対して、自治体から「葬祭費」が支給されます。支給額は自治体によって異なり、3万~7万円が一般的です。申請には、死亡診断書のコピーや葬儀社の領収書、申請者の口座情報などが必要となります。
葬祭扶助制度
故人の遺族が生活保護を受けているなど、経済的に困窮していて葬儀費用を出すことができない場合に適用されるのが、生活保護法に基づく「葬祭扶助制度」です。この制度を利用すると、自治体が定める基準額の範囲内で葬儀費用が支給されます。
親が亡くなったが、葬儀費用が足りない……こうした事態を避けるためには、親子が元気なうちに「もしも」の話をしておくことが何よりも大切です。
「どんなお葬式をしてほしいか」
「費用は誰がどのように負担するのか」
このようなデリケートな話題も、エンディングノートを活用すれば話し合うきっかけになります。親の希望を書き留めてもらうことで、いざという時に慌てずに済み、遺された側の精神的な負担も大きく軽減されます。また、経済的な備えとして、少額短期保険(葬儀保険)の活用も有効な選択肢です。手頃な保険料で葬儀費用に特化した保障を得られるため、遺された家族に金銭的な負担をかけずに済みます。
親の死は、いつか必ず訪れるもの。そのとき、「お金がなくて弔えない」という悲しい事態に陥らないためにも、公的な制度を知り、生前の備えを進めておくことが重要です。
[参考資料]