住宅購入は「夢のマイホーム」という言葉で語られる一方で、思い描いた理想と現実の間には、大きな隔たりが生まれることがあります。特に毎年かかる固定資産税は、購入当初には意識されにくい落とし穴のひとつです。
払えません…〈年収600万円〉35歳で買ったマイホーム、10年後の「固定資産税・25万円」の悪夢。夫婦が見落とした「まさかの落とし穴」 (※写真はイメージです/PIXTA)

知らなかったでは済まされない「固定資産税」の仕組み

住宅金融支援機構の調査によると、2024年度に土地付き注文住宅を購入した世帯の平均年収は669万円で、下村さん夫婦と同程度です。彼らが知らなかった固定資産税の仕組みについて、今一度、確認しておきましょう。

 

1. 新築住宅の「税金のワナ」を知る

最大のポイントは、下村さん夫婦が直面した「軽減措置の終了」です。新築の戸建てやマンションには、要件を満たせば最初の3年間(長期優良住宅などは5年間)、居住部分の床面積120㎡までの固定資産税額が2分の1に減額される特例があります。

 

多くの人が、この割引された税額を「本来の税額」だと勘違いしてしまい、将来の資金計画を立ててしまいます。しかし、これはあくまで期間限定のサービス期間のようなもの。措置が終了する4年目(または6年目)に、税額が本来の額に戻る、つまり実質的に倍近くになるという現実を正しく理解しておく必要があります。

 

2. 固定資産税は「変動する」というリスク

さらに重要なのは、固定資産税が「固定」の税金ではないという点です。固定資産税は「固定資産税評価額×税率(標準1.4%)」で算出されます。この評価額は、土地と家屋(建物)のそれぞれで評価されます。

 

家屋の評価額は年数の経過とともに下がっていきますが、問題は土地の評価額です。土地の評価額は3年に1度「評価替え」という見直しが行われ、周辺の環境変化や地価の動向によって上下します。下村さん夫婦のケースのように、近隣の再開発や新駅の開業などで土地の利便性が向上すると、土地の評価額は上昇します。その結果、建物の価値が下がっても、それを上回る勢いで土地の価値が上がれば、支払う固定資産税の総額は年々増えていく可能性があるのです。

 

下村さん夫婦の後悔の根源は、ひとえに「知らなかった」ことに尽きます。しかし、これらのリスクは事前に把握することが可能でした。住宅購入は、人生で最も大きな買い物のひとつです。住宅ローンの返済額という目先の数字に目を奪われがちですが、固定資産税や将来の修繕費といった「住み続けるためのコスト」も長期的な視点で捉え、情報収集を怠らないことが重要です。

 

[参考資料]
住宅金融支援機構『2024年度 フラット35利用者調査』