住宅購入は「夢のマイホーム」という言葉で語られる一方で、思い描いた理想と現実の間には、大きな隔たりが生まれることがあります。特に毎年かかる固定資産税は、購入当初には意識されにくい落とし穴のひとつです。
払えません…〈年収600万円〉35歳で買ったマイホーム、10年後の「固定資産税・25万円」の悪夢。夫婦が見落とした「まさかの落とし穴」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「こんなはずじゃなかった…」マイホームの理想と現実

「まさか、こんなはずじゃなかったんですけどね……」

 

そう言って力なく笑うのは、都内近郊に住む下村裕也さん(45歳・仮名)。10年前、妻の陽子さん(45歳・仮名)と念願だった新築一戸建てを購入したときの喜びを、今でも鮮明に覚えているそうです。

 

当時、夫婦はともに35歳。世帯年収は約600万円。コツコツ貯めた頭金を元手に、3LDKの戸建てを手に入れました。

 

「庭で子どもを遊ばせたり、友人を招いてバーベキューをしたり。そんな楽しいことしか考えていませんでした」

 

住宅ローンの返済は月々約13万円。当時の賃貸マンションの家賃とさほど変わらず、無理のない計画だと考えていました。購入後、初めて届いた固定資産税の納税通知書に記載された金額は年間約10万円。「思ったより安いね」「これなら全然大丈夫だ」と、夫婦は胸をなでおろしました。

 

しかし、その楽観的な見通しは、3年後に打ち砕かれます。4年目の春に届いた納税通知書を開いた陽子さんは、思わず声を上げました。

 

「税金が倍近くになってる!」

 

慌てて確認した裕也さんの目に飛び込んできたのは「18万円」という数字。なぜ急に上がったのか。夫婦は慌てて調べ、ようやく「新築住宅の軽減措置」が終わったのだと理解しました。最初の3年間は、税金が安くなる特例が適用されていたのです。

 

「もちろん、そういう制度があることは不動産会社の担当者から聞いていた気もするんですが…。正直、ローンの返済額のことで頭がいっぱいで、割引後の金額がずっと続くと、思い込んでいました」

 

年単位で見れば誤差の範囲かもしれませんが、子どもの成長とともに支出が増える一方のなかで、これは手痛い想定外でした。

 

さらにマイホーム購入から10年。街は大きくその姿を変えました。最寄り駅の隣に新駅が開業し、駅前には大型の商業施設が誕生。都心へのアクセスも格段に向上し、街の人気は高まる一方でした。土地の資産価値が上がったことを喜んだのも束の間、それが固定資産税の評価額に直接反映されたのです。今年の納税通知書に書かれていた金額は、なんと「25万円」。当初の2.5倍にまで膨れ上がっていました。

 

「子どもも高校生になり、塾代や将来の大学費用で教育費はピークです。給料は10年前からほとんど上がっていないのに、出ていくお金ばかりが増えていく。便利になったのは嬉しいですが、そのせいで税金が上がるなんて……いきなりこんな金額、払えませんよ」

 

理想だったはずのマイホームのリビングで、夫婦は深いため息をつきました。