夫は稼ぎ、妻は家計を管理する。そんな昭和から続く暗黙のルールを、いまも続けている夫婦は少なくないでしょう。子育てを終えた夫婦が老後を考えはじめたとき、長年信じてきた“当たり前”が揺るがされるようです。
ゼロが一つ足りなくないか…?「お小遣い月5万円」の年収900万円・57歳夫、定年を前に専業主婦・妻から差し出された「通帳」にめまい (※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦で始める「家計の見える化」

充さん夫婦のように、長年信じてきた家計管理が、実は時代の変化に対応できておらず、リスクを抱えているケースは少なくありません。まず、家計の全体像を夫婦で共有することから始めましょう。

 

最大の問題は、家計がブラックボックス化してしまうことです。妻一人が家計を管理する状況では、夫婦で家計の課題を共有できません。留美さんのように、よかれと思ってやったことが裏目に出ても、夫はそれに気づくことすらできないのです。インフレ、金利上昇、円安、そして変化し続ける金融商品。現代社会では、夫婦が協力し、常に金融リテラシーをアップデートし続けなければ、資産を増やし、守ることは困難です。

 

では、具体的にどうすればいいのでしょうか。いまからすぐに実践できる、シンプルな家計管理方法をご紹介します。

 

共通口座を作り、家計の基本資金をそこに入れる

夫の給与が振り込まれる口座を「共通口座」とし、そこから住宅ローンや光熱費、食費といった家族のための支出をすべて支払うようにしましょう。

 

夫婦それぞれに自由なお金を配分する

共通口座から、毎月決まった額を夫婦それぞれの個人口座に振り込みます。これが各自の「自由なお金」です。なにに使ったかを、互いに干渉する必要はありません。

 

NISAで長期投資を始め、お金にも働いてもらう

これまで教育費に充てていた資金の一部を、NISAを活用した積立投資に回しましょう。夫婦それぞれが口座を開設すれば、非課税で投資できる枠も広がります。全世界株式のインデックスファンドなど、リスクを抑えた商品で、10年、20年という長期的な視点での資産形成を目指すのが王道です。

 

退職金は、まとまったお金の運用を専門家と相談する

数年後に受け取る退職金は、老後生活を支える大切な資金です。銀行の普通預金に預けたままでは、インフレで価値が目減りしてしまいます。退職金が入ったら、すぐに使うお金、数年以内に使うお金、当面使う予定のないお金に色分けし、使う予定のないお金については、専門家と相談しながら、NISAとは別の形でまとまった資金での運用を検討することをお勧めします。

 

3ヵ月に一度、家計会議を開く

夫婦で共通口座の収支を確認し、資産全体の状況(預金、投資の評価額など)を共有します。「車の買い替えが近い」「保険を見直したい」といった議題について話し合い、将来のための貯蓄・投資計画を一緒に立てましょう。

 

この方法の目的は、家計簿を細かくつけることではありません。夫婦が家計の全体像を共有し、お金について対等に話せる関係を築くことにあります。家計管理をどちらか一方に任せるのは、会社の経営を社長一人に任せ、ほかの役員は決算書すらみないのと同じです。夫婦は、家庭という共同体の「共同経営者」。二人三脚で資産を守り育てていく。それこそが、豊かな老後を実現するための夫婦の形といえるでしょう。