年金月15万円。平均的な高齢者といえますが、歴史的な物価高のなか、平均でも生活は困窮し、下流老人へと転落してしまう状況に陥っています。厳しすぎる年金生活者の現実とは?
「年金月15万円」68歳男性、生活苦に悲鳴…インフレ日本で待ち受ける「普通の人」が「下流老人」と化す過酷な末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

「月15万円の年金」で描いたはずの、穏やかな老後

「まさか、こんなはずではなかった……」

 

立花大さん(68歳・仮名)。現役時代は真面目に働き、コツコツと貯蓄にも励んできたといいます。65歳まで勤め上げ、現在受け取っている年金は月額にして約15万円。決して裕福ではないものの、夫婦2人で地方で暮らしていくには十分な額だと考えていました。

 

「退職金もあり、妻と2人、贅沢をしなければ年金だけで十分にやっていける。残りの貯蓄は、いざという時のために取っておこうと。そう話していました」

 

年金を受け取り始めたのは、コロナ禍のなか。ただ当初よりも少し混乱が落ち着き、たまには遠出にでも……そんなことも考えられるようなタイミングでした。思い描いたような穏やかな老後が始まる――そう思っていましたが、想定通りではないと感じるようになったといいます。

 

「最初は、スーパーで買う野菜や肉が少し高くなったな、という程度でした。ですが、それが日に日にエスカレートしていく。ガソリン代も高騰し、車での外出も躊躇するようになりました。何より堪えたのが、光熱費です。冬場の暖房を少し我慢しても、請求書を見て愕然としました。現役時代には考えられない金額です」

 

追い打ちをかけるように、持病の薬代も負担を増していきます。友人から旅行などに誘われても、将来への不安が勝り、誘いを断ることも多いといいます。

 

「年金は毎年少しずつ目減りしているのに、出ていくお金は増える一方。妻の年金も合わせると月22万円ほど。これだけあれば大丈夫だという自信は、あっという間に消え去りました。毎月、預金を取り崩して生活費の赤字を補填する日々です。通帳の残高が減っていくのを見るたびに、ため息しか出ません。このままでは破綻してしまうのではないでしょうか……」

 

かつて描いた穏やかな老後は、もはや遠い夢物語なのか――。