近年、葬儀の形は大きく変化しています。かつて主流だった一般葬に代わり、ごく近しい親族のみで故人を見送る「家族葬」を選ぶ家庭が、コロナ禍を経てさらに増加しました。費用を抑えられ、心静かにお別れができるというメリットがある一方、その選択が思わぬ後悔に繋がるケースも少なくありません。
家族葬なんてするんじゃなかった…年金72万円の87歳母との別れ。世帯年収750万円の娘は「安く済む」「心静かに送れる」と安堵も、火葬数日後に大後悔のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

後悔しないために…知っておきたい「葬儀のお金」

青子さんのように、家族葬を選んだことでかえって心労を抱えてしまうケースは、決して珍しくありません。後悔しないために、葬儀に関するお金の知識と、周囲への心構えを学びましょう。

 

葬儀で活用できる公的な給付金

あまり知られていませんが、葬儀を行うと公的な健康保険から給付金が支給されます。申請が必要ですので、忘れずに手続きしましょう。

 

・国民健康保険の場合:葬祭費

自治体によって異なりますが、3万~7万円程度が支給されます。申請先は故人が住んでいた市区町村の役所です。

 

・会社員などの健康保険の場合:埋葬料

一律で5万円が支給されます。申請先は故人が加入していた健康保険組合や協会けんぽです。

 

葬儀費用は「相見積もり」で大きく変わる

葬儀費用には定価がなく、葬儀社によって金額は大きく異なります。「最初の1社」で決めず、複数の葬儀社から見積もりを取る「相見積もり」をしましょう。最近では、インターネットで複数の葬儀社を手軽に比較できるサービスもあります。費用だけでなく、プランの内容や担当者の対応などを比較検討することが、納得のいく葬儀に繋がります。

 

故人の“社会的な繋がり”にも想いを馳せる

葬儀の形を決めるとき、私たちはつい「故人の遺志」と「遺族の経済事情」という2つの視点だけで考えがちです。しかし、八木さんの経験が示すように、そこにはもう一つ、「故人が生前に築いた社会的な繋がりと、そこにいる人々の想い」という大切な視点があります。

 

時代の流れだから、と単純に割り切るのではなく、故人が晩年、誰と親しくしていたのかを少しでも想像してみること。もし可能であれば、親しい友人や関係者に連絡を入れ、「母は家族葬を望んでいますが」と一言事前に伝えておくだけでも、結果は大きく違ったかもしれません。

 

葬儀は残された側の心の整理をする場でもあります。大切なのは、故人の遺志、遺族の事情、そして周囲の想い、この3つのバランスを取ること。それが、後悔のないお別れを実現するための、最も重要な心構えといえるでしょう。