(※写真はイメージです/PIXTA)
「また結婚するの?」きらびやかな兄の、数えきれない結婚歴
内藤聡子さん(48歳・仮名)にとって、7歳上の兄・祐介さん(享年50歳・仮名)は、いつだって自分の人生の主役を張るような人でした。小さなころ、努力をしていない(ように見える)にもかかわらず勉強ができ、高学歴で高収入。現在の年収は2,000万円を優に超え、湾岸エリアのタワーマンションで華やかな独身生活を謳歌するその姿は、本当にまぶしいものだったといいます。
しかし、そのプライベートは破天荒そのもの。大学卒業直後に最初の結婚をして以来、離婚と再婚を繰り返し、一体、婚姻歴が何回あるのか、聡子さんにはもう数えきれないほどでした。
「最初の結婚では、式を挙げましたが、そのあとは、『結婚したんだ』と『離婚したんだ』の報告だけ。『また?』と、呆れるしかありません。最初の奥さんの顔なんて、もう朧げですよ」
そんな兄だからこそ、聡子さんは突然かかってきた一本の電話に、言いようのない胸騒ぎを覚えました。
「今度の週末、大事な相談があるんだ」
呼び出されたのは大学病院。そこで告げられたのは、聡子さんの思考を停止させるには十分すぎる、信じがたい事実でした。自身が「ステージ4のがん」である、と。
「実は子どもが…」地獄の始まりだった兄の連続告白
頭が真っ白になる聡子さんを前に、祐介さんは淡々と話を続けます。そして、「ここからが本題なんだが」と切り出したのが、自身の財産に関する話でした。「お前にも財産の一部を遺すつもりだ」と言う兄に、聡子さんは「今はパートナーもいないんだから、自分の治療のことだけを考えて。私のことは心配しなくていい」と、かろうじて言葉を返します。それを受けて、祐介さんがポツリと「仰天告白」を始めたのです。
「いや、俺のことはいい。ただ、子どもがな……」
兄の言葉に、聡子さんは耳を疑いました。兄に子どもがいるなど、ただの一度も聞いたことがなかったからです。
「『最初の奥さんとの間に子どもがいるんだ。生まれてすぐに離婚したから、お前に言うタイミングがなかった』なんて、そんな馬鹿な話があるでしょうか」
祐介さんの告白は終わりません。「実は、もう1人、子どもがいる」。それは、結婚はしていない女性との間に生まれた、認知だけしている子どもだといいます。聡子さんが言葉を失っていると、祐介さんはさらに続けました。「実は、もう1人……」。最終的に、聡子さんが会ったこともない兄の子どもは、合計で3人いることが判明したのです。そして、祐介さんはこう続けます。
「3人の子どもがいることは知っているが、連絡先を知らない。どこで、何をしているのか、まったく知らないんだ。だから俺が生きているうちに調べてほしい。そして俺が死んだあとのことは、すべてお前に任せたいんだ」
近いうちに兄がいなくなってしまうかもしれないという悲しみ、突然現れた子ども(姪か甥)たち、そして遺産分割という面倒……インパクトが強すぎる話の連続に、聡子さんの感情は大混乱。気づけば、「おい、すべてを私に押し付けるな! 自分が生きているうちに何とかせぃ」と叫んでいたといいます。