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「安さ」の裏側…介護施設の厳しい現実
公益財団法人介護労働安定センター『令和5年度介護労働実態調査』によると、介護職の離職率は13.1%。全産業の平均離職率15.4%であり、特別高いというわけではありません。ただ人手不足感は高く、有効求人倍率は令和7年3月、全職業平均1.16倍に対し、介護職は3.97倍。圧倒的に足りていない状況です。
人手不足のひとつの要因とされているのが、介護業界の賃金。平均月給は常勤で約33万~34万円程度で、年収にすると約400万円程度と全産業の平均と比較しても低水準にとどまっています。
そもそも有料老人ホームの費用は、主に家賃相当額、管理費、食費、そして介護保険の1~3割の自己負担分で構成されます。施設のサービスを手厚くするための「上乗せ介護費」などが加わることもあります。費用を抑えるためには、これらのどこかを削らなければなりません。都心から離れた立地で地代を抑える方法もありますが、最も手をつけやすいのが人件費なのです。
利用料が周辺相場より極端に安い施設は、人件費を抑えることで価格を維持している可能性があり、それが職員の離職率の高さやサービスの質の低下に直結するリスクを孕んでいるのです。
もちろん、費用が安いホームすべてが人件費を圧縮しているわけではありません。駅から遠いという立地だから、既存の建物を改装して建築費を抑えているから、大手のスケールメリットを生かしているから、ICT導入で人件費を抑えているから……企業努力で費用をぐっと抑えている場合も珍しくありません。
いずれにせよ、安いことには理由があり、もし周辺相場よりも安いのであれば、その理由を探るべきでしょう。
「安さだけで選んでしまった私が、本当に愚かでした。母の年金で、と費用ばかりに気を取られてしまいました。どんなに費用が安くても、ここでは母が安心して過ごすことができません」
今、費用は多少かさんでも、母が安心して過ごせる別の施設を探し始めています。
【参考資料】
公益財団法人 介護労働安定センター『令和5年度介護労働実態調査』
厚生労働省 第1回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会 資料5『介護人材確保の現状について』