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お盆だから…北海道の新居が無料ホテルと化した10日間
大手メーカーに勤務する武田健太さん(35歳・仮名)が、妻の優美さん(34歳・仮名)、息子の颯太くん(8歳・仮名)と共に東京から札幌へ転勤したのは、その年の春のこと。初めての北海道で迎える夏、その知らせは1本の電話からでした。
「『今年のお盆は、そっちに行くから』と、東京に住む母から明るい声で言われました。もちろん嬉しかったですよ。新しい家や、元気に過ごしている孫の顔を見せてやりたい、と。でも、心のどこかで一抹の不安があったのも事実です」
健太さんの不安は、残念ながら的中します。お盆休みに合わせてやってきた両親、正雄さん(68歳・仮名)と悦子さん(65歳・仮名)は、空港に到着した瞬間から完全な「お客様」モードでした。長旅の労いもなく、新居に着くなりソファに深く腰掛け、「お腹すいたなあ」「せっかく来たんだから、毎日うまいもの食べさせてくれよな」と悪びれもなく言いました。
「正直、図々しんですよね、うちの両親」
健太さんにとっても貴重なお盆休み。家族との時間を楽しむ一方、十分な休息を取りたい……しかし、わざわざ東京から両親がやってきているのですから、諦めるしかありません。日中は両親のリクエストに応え、道内各地の観光地をアテンド。夜は疲れ切った体に鞭打って、北海道の新鮮な食材を使った料理を振る舞う。しかし残念ながら、武田さん夫婦のおもてなしを「当然」と、感謝の言葉はほとんどありません。
さらに夫婦を悩ませたのが、両親の過剰な孫への甘やかしでした。
「妻と決めた『ゲームは1日1時間』というルールを、母が『おばあちゃんが許すから』と簡単に破ってしまう。食事の前にチョコレートをあげて、妻がやんわり注意しても『たまにしか会えないんだから、いいじゃないの』と聞く耳を持ちません。それは久々に感じたストレスでした」
健太さんが父親に苦言を呈しても、「固いこと言うなよ。孫が喜んでいるんだからいいじゃないか」と一蹴されるだけ。妻と両親との間で板挟みになり、健太さんはさらに疲弊していきました。