(※写真はイメージです/PIXTA)
「あなたの親でしょ!」妻の怒りが示した家族の境界線
健太さん宅の緊張状態がピークに達したのは、滞在も終盤に差しかかったある日の夜でした。その日、両親が颯太くんに内緒で、最新の高価なゲーム機を買い与える約束をしていたことが発覚したのです。堪忍袋の緒が切れたのは、これまで黙って耐えていた妻の優美さんでした。
「『いい加減にして! あなたの親でしょ、私たちのルールをめちゃくちゃにするのはやめてって、ハッキリ言ってよ!』と、キッチンで初めて私に強い口調で言いました。もちろん、妻が怒るのは当然です。しかし、『そんな簡単に言えるか?』と、つい私も声を荒らげてしまった……」
夫婦喧嘩の声を聞きつけた義母が、「まあ、優美さん。健太にそんな言い方しなくても」と口を挟んできた瞬間、健太さんの中で何かが切れました。彼は両親の前に立つと、溜まりに溜まった感情をぶつけました。
「もういい加減にしてくれよ! 父さんも母さんも、少しはこっちの事情を考えてよ。それにここはホテルじゃないし、俺たちは観光ガイドでもない! 颯太の教育にも口を出さないでくれ!」
家の中は、一瞬凍り付いたように静まり返りました。「やばい、言い過ぎた——しかし、遅かったです」。その後の数日間は、言うまでもなく気まずい空気が流れました。両親は予定通りに東京へ帰っていきましたが、空港での別れ際も、ぎこちない雰囲気を拭うことはできなかったといいます。
今回の件で、健太さん夫婦は、改めて家族との距離感について考えさせられたといいます。株式会社AlbaLinkが実家まで片道2時間以上かかる男女に聞いたところ、実家が遠いことのメリットとして、最多の「旅行気分で帰省できる」(41.2%)に続き、「実家との程よい距離を保てる」(29.4%)が挙げられました。また6位には「家族と仲良くなれる」(4.2%)がランクインしました。
「私たち家族は、北海道と東京くらいの距離感がちょうどいいのかもしれません」