(※写真はイメージです/PIXTA)
善意の顔をした「介護の丸投げ地獄」
「眠る時間もないとは、まさにあのこと。心も体も限界でした」
田中美咲さん(53歳・仮名)は、大学に通う2人の子どもの教育費と、あと10年の返済が残っている住宅ローンのため、夫・浩一さん(仮名・55歳)と二人三脚で働いていました。契約社員として平日は9~18時までの勤務をこなしていたのです。その日常が崩れ始めたのは、2年前のこと。近所で一人暮らしをしていた夫の母・トシ子さん(82歳・仮名)が、自宅で転倒し入院、ロコモが進行した結果、要介護2の認定を受けたのです。
「夫は管理職で、帰りは毎日夜遅く。義妹の洋子さん(50歳・仮名)は隣県に嫁いでいて、『子どもの受験が大変で……』が口癖。必然的に、一番近くに住んでいる私が面倒をみることが多くなりました」
自宅から義実家には車で30分ほどの距離。介護を理由に9~17時に勤務を変更してもらい、平日は毎日車で駆けつけました。休みの土日も基本的に駆けつけ、トシ子さんの面倒をみました。食事の支度から下の世話までこなす日々。美咲さんは「できる限りのことはしよう」と奮闘しますが、夫・浩一さんは「ありがとうな。お前がいてくれて助かるよ」と感謝の言葉を口にはするだけ。たまに週末に顔を出す以外、具体的な手伝いは一切しませんでした。
追い打ちをかけたのは、義母であるトシ子さんの言葉です。
「美咲さん、この煮物は味が薄いわ」
「もっと頻繁にお掃除はできないの?」
感謝されるどころか、不満ばかりをぶつけられました。そして、決まって最後にこう言うのです。
「お嫁さんなんだから、家のことをするのは当たり前でしょ」
電話口で「お義姉さんがいてくれるから、本当に安心だわ。いつもありがとう」と繰り返す義妹の洋子さん。その言葉は美咲さんにすべての責任を押し付けているようにしか聞こえません。夫と義妹、そして義母。三者から「介護の丸投げ」され、美咲さんは疲弊するばかりだったのです。