(※写真はイメージです/PIXTA)
年金事務所でこぼした「何気ない一言」が…
佐藤恵さん(74歳・仮名)。長年の友人である鈴木良子さん(75歳・仮名)が、先日、信じられないような出来事に遭遇したといいます。良子さんが夫を事故で亡くしたのは、今から10年ほど前のこと。それで手にした遺族厚生年金は月々7万5,000円ほどで、自身の年金と合わせると月14.5万円ほどだといいます。贅沢をしなければ年金だけでも暮らしていける――そんな水準でした。
そんな良子さんに転機が訪れたのは、6年ほど前のことです。趣味ではじめた地域のコーラスサークルで、田中一郎さん(77歳・仮名)と出会いました。同じようにパートナーに先立たれ、1人で暮らしていた田中さんと鈴木さんはすぐに意気投合。一緒に過ごす時間が増えていったそうです。そして「この先もずっと1人でいるのは寂しい。もしよかったら、一緒に暮らさないか」という田中さんからの申し出に対し、鈴木さんは承諾。今さら籍を入れるのも、相続などを見据えると煩わしいと、事実婚という形を取ることにしたといいます。
「いわゆる、内縁の妻、ってやつね」
そうニッコリ笑う鈴木さんを見て、佐藤さんは夫の死を乗り越えたのだと安心していました。
「いつ、どこに行くにも一緒にいるみたいですよ、田中さんと良子は。昔、お年寄り夫婦が手をつないでスキップしているコマーシャルがあったじゃないですか。あんな雰囲気」
ただ2人の穏やかな生活が一変するきっかけは、本当に些細なことでした。鈴木さんが自身の年金の手続きをするために、2人で近所の年金事務所を訪れたときのこと。手続きの傍ら、職員との何気ない世間話のなかで、担当者が鈴木さんに尋ねました。
「お二人、とても仲がよさそうですが……一緒に住んでいらっしゃるとか?」
悪気のない、ごく自然な質問でした。鈴木さんもにこやかに「ええ、5年ほど前から、この人にお世話になっているんです」と答えたといいます。その一言が、悲劇の引き金になるとも知らずに。職員の表情が、ふと変わりました。
「失礼ですが、鈴木さまは現在、遺族年金を受給されていますよね?」