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優しい嫁は辞めて…家計丸投げ、将来の扶養も拒否
次の給料日、美咲さんは夫に通帳と家計簿をすべて渡し、「もう私一人では、この家の家計を管理する余裕がありません。来月からはすべてあなたにお任せします。お義兄さんにお酒を買ってあげるのも自由ですが、この予算内で、子どもたちの学費もきちんと貯金してください」と宣言。夫を問題の当事者に仕立て上げることにしたのです。
「なんだ、そんなことか」と快諾した夫。しかしみるみる減る預金残高を前に、わずか1週間で音をあげました。さらに義兄を甘やかす義母にも素直に伝えました。
「お義母さん、私たちは将来、お義兄さんの面倒を見る覚悟はありません。家族7人の支え、住宅ローンを払っている身。貯金はゼロです。収入が年金だけになる老後、とてもお義兄さんをみる余裕なんてありませんよ。お義兄さんはどうやって生きていくんですか?」
内閣府『2022年度 こども・若者の意識と生活に関する調査』によると、ひきこもり状態にある人は15~39歳で2.05%、40~64歳で2.02%、数にすると全国に146万人。ひきこもりになった理由として多いのが中高年では「退職したこと」で44.5%。「新型コロナウイルス感染症が流行したこと」20.6%、「病気」16.8%、「人間関係がうまくいかなかったこと」11.6%と続きます。美咲さんの義兄のように、中高年層が親や兄弟姉妹の世帯に経済的に依存するケースは決して珍しいものではないのです。
経済的に依存する中高年のひきこもり問題を放置すると、親の高齢化で「8050問題」から一家共倒れへと発展し、親亡き後は兄弟姉妹に負担がのしかかる「きょうだいリスク」も生じさせます。本人の心身の健康も悪化し、事態はさらに深刻化するのです。
この問題は家族だけでは解決困難。重要なのは、「ひきこもり地域支援センター」等の専門機関に相談し、第三者の視点を入れること。「働け」と迫らず、家庭での役割を持たせるなど段階的な支援を行いながら、親亡き後のための公的支援についても情報を集めておいたほうがいいでしょう。
「私が行動を起こしたあと、家の空気は正直ピリッとしています。しかし夫は初めて問題の深刻さを理解し、義兄と向き合おうとしています。義母も、以前のように私だけを責めることはなくなりました。本当に小さな変化ですが、大きな一歩だと思っています」
[参考資料]
内閣府『2022年度 こども・若者の意識と生活に関する調査』