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最後の砦「生活保護」で直面する厳しい現実
生活保護制度は、日本国憲法第25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づき、生活に困窮するすべての国民が利用できる最後のセーフティーネットです。資産や能力、あらゆるものを活用してもなお最低生活費に満たない場合に、国が定める基準(最低生活費)から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。
これは、困窮した国民の当然の権利です。しかし現実には、申請の窓口で追い返されたり、申請をためらわせるような対応を受けたりする、いわゆる「水際作戦」が行われることも。
「職員の方は私の話を一通り聞くと、『まだ55歳とお若いですし、働けますよね。お母様は施設に預けるという選択肢もありますし、もう少し頑張ってみてはいかがですか?』と……もう何も言えなくなって、逃げるように帰りました」
淡々とした事務的な口調。まるで「あなたの努力が足りないだけだ」と言われているようだったといいます。もちろん、水際作戦は違法。職員の個人的な判断で申請を諦めさせるようなことはあってはならないものです。
もし、窓口で申請を断られたり、威圧的な態度を取られたら……申請の意思を明確に伝え、「申請書をください」とはっきりと要求することが重要です。また申請には1人ではなく、支援団体や専門家に同行してもらうのも有効な一手。水際作戦の防止になるほか、申請手続きがスムーズに行え、精神的な負担も軽減されます。
由美さんはその後、知人から紹介されたNPOのスタッフと再び福祉課を訪れ、無事に申請を受理してもらうことができたといいます。
[参考資料]
公益財団法人生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査[2人以上世帯]/2021(令和3)年度』
総務省統計局『令和4年就業構造基本調査』