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「返品=解約」ではない、という現実
誠さんが商品を返品してから数週間後、事業者から請求書が届き始めました。金額は2回目の商品代金にあたる約5,000円。誠さんはこれを「間違いだ」と判断し、支払うことはありませんでした。
「商品は手元になく、とっくに返しているのですから、支払う義務はないと信じていました。その後も何度か請求書は届きましたが、相手にする必要はないだろうと……」
しかし、請求書を無視し続けたある日、届いたのが冒頭の法律事務所からの通知でした。そこには、未払い代金と遅延損害金の支払いを求める旨と、「期日までに支払いがない場合、法的措置を検討する」という内容が記されていました。
「法律事務所なんて名前の封筒が届いた時は、さすがに心臓がドキッとしました。『これは、ただ事じゃないのかもしれない』と。商品は手元にないのに、一体、何がどうなっているのか、さっぱり分からなくて、本当に混乱しました」
誠さんが陥ったトラブルの核心。それは、「商品の返品」が、必ずしも「契約の解約」にはならないという点にあります。通信販売では、事業者が設けた正規の手続きに沿って解約の意思を伝えない限り、契約は継続していると見なされます。誠さんのように、商品を一方的に送り返しただけでは、支払い義務が残ってしまうのです。
このようなトラブルを避けるために、インターネットで商品を注文する際は、申し込みを確定させる前に、最終確認画面で以下の点を必ずチェックすることが重要です。
・「定期購入」が条件になっていないか
・支払総額はいくらになるのか
・解約の条件や方法は明記されているか(電話番号など)
・事業者の連絡先は確かか
そして、万が一に備え、それらの情報が記載された画面をスクリーンショットで保存しておくと、いざという時に自分を守る証拠となります。
「消費生活センターに相談したら親身に話を聞いてくれて。私が撮っていた広告の画面を見せると、『これは誤認を招く表示ですね』とすぐに理解してくれました」
誠さんから詳しい状況を聞き取った消費生活センターは、すぐに事業者との間に入り、「あっせん」と呼ばれる交渉を開始しました。誠さんが「1回限りのお試し」と誤認して申し込んだ可能性が極めて高いこと、商品はすでに返品されていることなどを、法的な根拠を基に事業者へ伝えてくれました。結果、事業者は請求を正式に取り下げ、誠さんは一切の支払いを免除されることになりました。あれほど執拗に届いていた請求書も、法律事務所からの通知も、ぴたりと止んだといいます。
[参考資料]
独立行政法人国民生活センター『通信販売での定期購入』