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増え続ける認知症患者…介護と相続対策はセットで
内藤家の大騒動。ポイントは「遺産分割後の約束が守られなかったこと」と、「認知症を患う親の介護と財産管理」。
秀一さんは、父の遺産を多く受け取る代わりに母の介護をすると約束しましたが、口約束だけでは法的な拘束力はありません。一度成立した遺産分割協議をやり直すには、相続人全員の同意が必要ですが、内藤家のケースではすでに遺産が残っていないため、協議のやり直し自体が無意味になってしまいます。
また、認知症を患う親の介護問題も深刻です。内閣府『令和6年版高齢社会白書』によると、65歳以上の認知症高齢者数は2022年時点で約443万人と推計されており、高齢者の約8人に1人が認知症を患っていることになります。また、2040年には約584万人に増加すると予測されており、高齢化が進む日本では、誰もが直面する可能性のある問題です。
認知症を発症すると、本人による法的な手続きが困難になります。たとえば、遺言書の作成や不動産の売買、預貯金の引き出しなども、本人の意思能力が不十分と判断されれば、できなくなってしまう可能性があります。
このような事態を防ぐためには、「公正証書遺言の作成」や「任意後見制度の利用」、「家族信託の活用」など、事前の認知症対策と相続対策をセットで考えることが重要です。
相続トラブルの芽は、親が元気なうちから存在することが少なくありません。内藤家のように口約束だけでは何の効力も持たないということを、あらためて認識しておく必要があります。
[参考資料]
内閣府『令和6年版高齢社会白書』
法テラス『相続・成年後見に関するよくある相談』