会社員であれば「年金保険料を支払う」という意識は薄いかもしれませんが、自営業者等は自身で支払う必要があります。令和7年度は月額1万7,510円。現在、納付率は8割を超えていますが、意図的に支払わずにいると、とんでもない事態に直面します。
ただの紙切れじゃなかった…〈年収600万円〉だった36歳男性、日本年金機構から届いた「赤い封筒」に絶望。〈年金月25万円〉70代両親を巻き込む大騒動 写真はイメージです/PIXTA

「頼む、金を貸してくれ!」70代の両親に頭を下げ…

失業や収入減などにより保険料の納付が困難な場合、申請すれば保険料が免除・猶予される「国民年金保険料免除・納付猶予制度」があります。鈴木さんはその制度を知っていたものの、役所の窓口で自分の窮状を訴えるのが恥ずかしかったといいます。

 

「独立したのに失敗したと認めるようで……プライドが許さなかったんです」

 

滞納額は20万円弱。しかし、そのときの鈴木さんには、まったく余裕がありませんでした。

 

「強制徴収っていっても、徴収されるもんなんて何もない。それくらい生活は厳しかったんですが、ただ信用問題に関わってくるので、もし本当に強制徴収となったら、さらに仕事を失うことになりかねない。それは避けたかった」

 

数日間、悩みに悩み、わらにもすがる思いで電話をかけたのは、都内で年金生活を送る70代の両親でした。

 

「頼む、金を貸してくれ!」

 

鈴木さんの父親・正雄さん(仮名・72歳)と母親・良子さん(仮名・70歳)は、夫婦合わせて月々約25万円の年金を受給しながら、穏やかな老後を過ごしていました。そんな二人に助けを求めたところ、父・正雄さんは「ふざけるな!」と大激怒したといいます。

 

「もともと私は強く反対をしたんです。『独立なんて、そんな甘いもんじゃない』と。案の定、年金保険料が支払えないなんて、あいつはいつも世の中をなめているんですよ。情けなくて情けなくて……思わず声が大きくなってしまいました」

 

厚生労働省の資料によると、催告状が届くのは「控除後所得が300万円以上かつ7ヵ月以上の保険料滞納者」です。2023年度に最終催告状が送付されたのは17万6,779件、その先の督促状は10万2,238件、最終的に財産差押えに至ったのは3万0,789件でした。

 

両親が老後のために蓄えてきた貯金で未納分は一括納付され、鈴木さんの差し押さえは回避されました。その際、「実家に戻ること」と「再就職すること」の2つが、援助の条件だったといいます。

 

「私たちだって自分たちの生活で精いっぱいで、もう金銭的に助けてあげることはできない。今回のことを教訓にして、しっかりと生活を立て直して、ここ(実家)を出て行ってもらいたいと思っています」

 

[参考資料]
日本年金機構『国民年金保険料』
日本年金機構『国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度』
厚生労働省『年金制度基礎資料集』