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「もう人生詰みました」赤い封筒の中身
意を決して赤い封筒を開封した優子さんは、そこに書かれた文字を見て、深い深いため息をつきました。「最終催告状」。国民年金保険料が、1年ほど未納になっていることへの最終催告でした。
収入があったころは、問題なく保険料を納付していました。しかし、収入が激減したここ1年ほどは、月々約17,000円の保険料を支払うことができず、見て見ぬふりを続けていたのです。催告状は、収入がまだ安定していた時期の所得に基づいて送付されています。現在の困窮した状況などお構いなしに、過去の所得を基準に「支払能力がある」と判断され、最後通告を突きつけられた形です。
「書かれた未納額を見て、絶望感に襲われました。今の自分には、月17,000円を払う能力もないんだなと……改めて思い知らされました。もう、私の人生は詰んでしまったんだと、本気で思いました」
国民年金保険料の納付は国民の義務です。未納のまま放置すると、将来の老齢基礎年金が減額されたり、受け取れなくなったりするだけでなく、万が一の際の障害年金や遺族年金が受給できないリスクもあります。そして、この「最終催告状」を無視し続けると、財産の差し押さえが強制的に執行される可能性もあるのです。
日本年金機構によると、2023年、赤色の封筒に入った最終催告状は176,779件に送付。督促状は102,238件に送付され、最終的に30,789件が財産差し押さえとなりました。
では、優子さんのように、収入が急激に減少し、保険料の納付が困難になった場合はどうすればよいのでしょうか。そのような状況に陥った人のための救済制度が「国民年金保険料免除・納付猶予制度」です。
この制度は、本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合や、失業、事業の廃止、天災などの理由で保険料を納めることが経済的に困難な場合に利用できます。申請が承認されると、保険料の納付が所得に応じて「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」免除されたり、納付が猶予されたりします。優子さんのように、フリーランスで大幅に収入が減少した場合も、失業や事業の廃止に準ずる状況として、特例的に免除が認められる可能性があります。
「財産差し押さえになっても何もないので、困ることなんてありませんが……」
自嘲気味に笑う優子さん。しかし、実際に差し押さえとなると、取引先に迷惑が及ぶこともありますし、今後のフリーランス活動にも影響を及ぼしかねません。その後、年金事務所を訪れ、正式に保険料猶予の申請をしたといいます。
[参考資料]
日本年金機構『国民年金保険料』
日本年金機構『国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度』
厚生労働省『年金制度基礎資料集』