“沈黙の臓器”と呼ばれる肝臓は、痛みを感じないため異変が起きても気づくことが難しいとされています。アルコールを分解するほか、さまざまな働きをすることから体の化学工場とも言われる肝臓の重要性と注意点について、肥満・脂肪肝専門医である尾形哲氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術【増補改訂版】』(KADOKAWA)より、42歳女性の事例をもとにみていきましょう。
お酒は飲まないのになぜ…肝機能「E判定」を受けた42歳女性、医師から告げられた「まさか真実」に驚愕【専門医が解説】
体重の約2%…脳より重い肝臓
「改めまして、由美さん。ご気分はいかがですか?」
「少し緊張していますが、よろしくお願いします。私、お酒なんてほとんど飲まないんです。だから、肝臓が悪いという結果が出てもピンとこなくて……」
「そうでしたか。最初に肝臓がどんな働きをしているかお伝えしてから、由美さんの肝臓の状態についてご説明しましょう。まず、肝臓の場所はわかりますか?」
えっ。腹部の臓器のイラストは見たこともあるし、肝臓の形も何となくわかる。でも、自分の体のどの辺にあるのか自信を持っては答えられない。
ときどきキリキリしたりすることもあるし……。
「この辺ですか?」
と、左胸の下のほうに両手を重ねてみた。
すると先生は、両手をそのまま右脇のほうにスライドさせるように促した。
「そう。そこです。由美さんのために毎日がんばっている肝臓はその下にあります。ちなみに、先ほど示された場所には胃があります」
「あはは、お恥ずかしい。キリキリ痛むことがあったので、肝臓かなと思ってしまいました……」
「気にしないでください。肝臓の位置を自信を持って言い当てられる人は、そんなに多くありませんよ。それに、今知っていただけたので、これからココを大事にしていけばいいんです。ついでなので、もう1つ。ダメージを受けていても、肝臓自体には痛みを感じる神経がないので、痛いということはないんですよ」
ごめん。思わず、心の中で肝臓に謝った。肝臓の場所なんて気にしたことなかった。それに、肝臓って痛まないんだ……。そして、先生は肝臓について説明を続けた。一般的な肝臓のサイズは左右に25㎝、前後と上下に15㎝ほどで、体重の約2%、1~1.5㎏の重さがあって、脳よりも重く、人体最大の臓器なのだそうだ。
1ℓの牛乳パック1本分もの重さがあるんだから、今、私の手のひらの下にある肝臓は、確かに大きな臓器だと想像ができた。