〈本記事の登場人物〉

■中川 由美さん(42歳・女性)

中学2年になる娘をもつ母。健康診断で肝機能検査の結果が悪く、精密検査を受けることに。食生活には自分なりに気を遣っていたにもかかわらず「脂肪肝」と診断される。脂肪肝は必ずよくなると医師に励まされるものの、不安を拭いきれない由美さん。そこで医師が提案した「今日からできる治療法」とは……?

最初の1カ月が肝心「マイナス2㎏の法則」

「『スマート外来』に来てくださったということは、きっと今の生活を見直して、体をよくしたいという強い思いを持っていらっしゃるのだと思います。由美さんの“肝臓をいたわる食事”について、一緒に考えていきましょう。そのためにも、由美さんの普段の食事や体についての困りごとを教えてください」

スマート外来:肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善のための専門外来。

何だか、全身の緊張がほどけた不思議な感覚にとらわれた。

「私には中学2年の娘がいます。出産後すぐは、母乳育児だったからか産前よりも体重が減る時期があったんです。だから、出産も悪くないな……とも思っていました。でも、その後は太るいっぽうで、今は出産前より12㎏ほど増えてしまいました。だからといって、何もしてこなかったわけではありません。私の体型のことだけではなくて、家族にも健康でいてほしいから、朝食は野菜とフルーツを使ったスムージーにしてみたり、ご飯に雑穀を入れて炊いてみたり。野菜不足を改善しようと野菜ジュースを飲んだり、腸活になるのでヨーグルトを食べたりすることも欠かさないようにしています。でもだめなんですね。その結果が、脂肪肝だなんて……」

話しながら、急に涙がにじんできた。私、何で泣いてるんだ。

「由美さんは、とてもがんばられてきたのですね。だめなことなんて1つもありませんよ。今日からできることは、由美さんの肝臓をいたわること。継続すれば、由美さんの脂肪肝は必ずよくなります。大丈夫です」

先生の言葉はありがたかったが、不安が勝っていた。

「脂肪肝をよくするお薬をちゃんと飲めば治りますか?」

「脂肪肝を単独で治すことのできる薬は、今のところありません。でも、薬よりはるかに効果のある方法があります。毎日の食事を変えることです。肝臓をいたわる食事は、脂肪肝だけでなく、糖尿病や脳卒中(のうそっちゅう)といった生活習慣病の予防にもなるのです。ただ、実践するのは由美さん、あなたです。ほかのだれでもありません」

と先生はおっしゃった。

「ここからが本題です。脂肪肝の改善には減量が欠かせませんが、由美さんは、体重を何㎏減らしたいですか?」