「自宅を売って現金化、でも引っ越しは不要」。老後の資金問題を解決する一手として注目されるリースバック。しかし、安易な利用は、むしろ老後を脅かすことになる可能性も……。実情をみていく。
リースバックを選んだばっかりに…「年金月5万円の75歳女性」老後資金1,200万円を確保したはずが、悔恨の念に駆られる理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

「リバースモーゲージ」との違い

リースバックと混同されがちな仕組みに「リバースモーゲージ」がある。「自宅を活用して老後資金を得る」という点は共通しているが、その内容はまったく違う。

 

リバースモーゲージとは、自宅を「担保」に入れて、そこに住み続けながら金融機関などから融資を受ける仕組みのこと。存命中は利息のみを支払い、元金は契約者が亡くなったあとに、相続人が担保である家を売却するなどして一括返済するのが一般的である。

 

リースバックとの最大の違いは、家の「所有権」の行方だ。リースバックは家を「売却」するため、契約した時点で所有権は完全に業者に移る。一方、リバースモーゲージはあくまで自宅を「担保」にした「融資」。契約者が亡くなるまで家の所有権は自分自身のまま。

 

この所有権の違いから、税負担も変わってくる。所有権が移るリースバックでは固定資産税の支払いがなくなるが、所有権を持ち続けるリバースモーゲージでは、これまでどおり固定資産税の支払い義務が生じる。

 

また、利用のしやすさにも差がある。リースバックは比較的利用しやすい一方で、リバースモーゲージは金融機関の融資商品であるため、申し込みには年齢制限や物件の担保評価、マンションの場合は対象外となるなど、厳しい条件が設けられていることがほとんどなのである。

選択肢は一つではない

経済的な困窮は、人の判断力を鈍らせる。「この方法しかない」という思い込みが、美恵子さんのように将来の自分をさらに苦しめる結果を招くことも。

 

そうした事態を防ぐには、複数の業者から見積もりを取ること、契約内容を徹底的に確認すること、専門家に相談すること、ほかの選択肢も探ってみることなどが重要だ。

 

かけがえのない「住み慣れた家」。しかし、その家を守るための選択が、かえって老後の生活を脅かす事態もあることを知っておくべきだ。安易な決断はせず、冷静に、そして慎重に、誰もが最善の道をみつけられるように願う。