年金を「いつから」「どのように」受け取るか──その選択は、老後の暮らしに大きな影響を与えます。制度の仕組みや金額の増減だけでなく、予期せぬ出来事や家族との関係もまた、人生設計を左右する要素となり得るようです。
年金は65歳でもらうべきでした…〈年金月27万円〉74歳父、〈繰下げ受給で月8万円増〉でも「報われない老後」。原因は45歳長男の「まさかのひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

仕事を辞めて実家に戻ってきた長男だったが…

十分な年金受取額とともに手に入れるはずだった、安心の老後。しかし、それは長男の大輔さん(仮名・45歳)によって一変します。

 

大輔さんは大学卒業後、就職氷河期の波に飲まれ、正社員の職には就けず、契約社員や派遣社員として職を転々としていました。3年ほど前に正社員としての採用が決まり、親子で喜んでいたのですが……。

 

「ちょっと仕事、辞めたんだ。上司との折り合いが悪くて、精神的に限界でさ……しばらく実家で休ませてほしい」

 

半年ほどで仕事を辞め、実家に戻ってきた大輔さん。茂さんは驚きつつも、「まあ、しばらくなら……」と受け入れました。しかし、それから2年以上たつのに、大輔さんが働きに出る気配はありません。バイトでもいいから仕事を探すように伝えても、彼はどこか他人事のように言うのでした。

 

「でもさ、親父、年金けっこうもらってるだろ? 俺を養うくらい、大丈夫じゃないの?」

 

そのひと言に、茂さんは言葉を失いました。確かに、年金は月27万円ある。しかし、それは「ひとりで生きる」ために試算し、努力して得た金額です。高齢者向けの健康保険料、介護保険料、突発的な医療費、将来的な介護施設入所の可能性……。それらを考慮したうえで、安心して豊かな老後を過ごしたいと考えた末の選択でした。決して、成人した息子を支えることなど想定していませんでした。