(画像はイメージです/PIXTA)

年金だけでは足りない現実が突きつけられるいま、必要なのは漠然とした貯蓄ではなく、“戦略的な資産設計”です。本記事では、税理士の辻哲弥氏が老後の資産形成において押さえておきたい「守る」「増やす」「遺す」の3つの柱を、預貯金・投資・不動産・相続など多角的な観点から解説します。「まだ早い」ではなく「いまだからこそ」始めるべき老後準備のポイントを、分かりやすくお伝えします。本記事は株式会社エールのWebサイトからの転載記事です。

不動産投資という選択肢

老後の資産形成において、不動産は「キャッシュフローを生み出す資産」として重要な位置を占めます。

 

たとえば、築15年のワンルームマンション(2,000万円)を所有し、月額家賃が8万円(年収96万円)の場合、管理費や税金を差し引いた実質利回りはおおよそ3.5~4.0%。定期的な家賃収入は年金のような役割を果たし、生活費の補填にもなります。

 

さらに、家賃はインフレに連動して上昇する可能性があり、インフレ局面でも資産価値を維持しやすいという特性があります。現金や債券の実質価値が目減りするなかで、不動産の役割は今後ますます重要になるでしょう。

 

ただし、以下のリスクにも注意が必要です。

 

・老朽化と修繕費の増加

・空室リスクや家賃下落リスク

・相続時のトラブル(共有名義など)

 

これらに対応するには、購入前の立地選定、物件の管理体制の確認、法人化の検討、信託スキームの導入など、計画的な設計が欠かせません。

 

また、不動産には相続税評価額が実勢価格より低くなる特性があり、節税対策としても活用されます。たとえば土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」が基準となり、相続税の圧縮につながるのです。

 

老後資産としての不動産は、単なる“資産”ではなく、収益・節税・承継の3要素を同時に満たす“戦略的な資産”です。

贈与・相続対策の重要性

築いた資産をどう遺すか――。

 

老後の資産戦略において、出口設計としての「贈与・相続対策」は欠かせません。老後は“使う”と同時に“引き継ぐ”フェーズでもあります。生前から計画を立てておくことで、税負担を抑え、家族間のトラブルも未然に防げます。

 

たとえば、毎年110万円まで非課税で贈与できる「暦年贈与」は、長期間かけて計画的に資産を移すのに適しています。さらに、死亡保険金には「法定相続人×500万円」の非課税枠があり、現金より有利に遺す手段となります。

 

不動産も評価圧縮効果のある資産です。相続税の計算では実勢価格ではなく「路線価」や「固定資産税評価額」が基準となるため、現金よりも評価が低くなり、結果として節税に繋がります。

 

また、近年注目されているのが「家族信託」です。認知症などで判断能力を失うと、資産の管理や売却が困難になるリスクがあります。家族信託契約を結んでおけば、名義は自分のままで管理権限だけを家族に委任でき、資産凍結を防ぐことが可能です。

 

重要なのは、税制や制度は常に変化しているということです。“そのうち考える”では手遅れになるリスクもあるのです。

 

老後の安心を「遺す」という視点で見たとき、贈与と相続の計画は早ければ早いほど有利です。資産形成のゴールは、単に自分のためだけでなく、次の世代にどう引き継ぐかを含めてこそ完成するといえるでしょう。

 

 

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