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不動産は、相続税評価額が実際の時価よりも低く算出される傾向があるため、現金よりも相続税の負担を抑えやすい資産です。たとえば、1億円の現金はそのまま相続税評価額も1億円ですが、それを不動産に換えた場合、相続税評価額を約7,000〜8,000万円に抑えることが可能となり、課税対象額を大きく減らすことができます。さらに、不動産は賃貸経営による収益化も見込め、また共有名義にすることで、相続人間で税負担を分散させることも可能です。本記事では、具体例を交えながら不動産活用の有効性を詳しく解説します。本記事は株式会社エールのWebサイトからの転載記事です。

不動産の相続税評価の計算方法

不動産の相続税評価額は、土地と建物でそれぞれ算出方法が異なります。土地、建物の評価方法につき、それぞれ見ていきます。

 

土地の評価方法

土地の相続税評価額には「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。

 

路線価方式:土地が面する道路ごとに定められた1㎡あたりの価格(路線価)を基に計算します。


例)路線価30万円、土地面積200㎡ → 30万円×200㎡ = 6,000万円

 

倍率方式:路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に倍率をかけて算出します。 

 

例)固定資産税評価額1,000万円×倍率1.2 = 1,200万円

 

建物の評価方法

建物は、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。評価額は市区町村から届く固定資産税課税明細書に記載されています。

さらに土地を人に貸せると評価を減額できるケース

他人に土地を貸し付けているような場合、自由に自分が使うことができないことを考慮され、土地の評価を減額することができます。

 

借地権が設定されている場合

借地権が設定されている土地は、貸していることにより自由に使えないため、相続税評価額が減額されます。借地権とは、第三者が土地を借りて、その土地に建物を建てる権利のことです。

 

借地権が設定されている土地の相続税評価額は「自用地の価額×(1-借地権割合)」となります。

 

例)土地の評価額1億円、借地権割合60%の場合
→1億円×(1-0.6)=4,000万円

 

借地権割合は30〜90%で地域によって異なります(都心部ほど高め)。銀座などの借地権割合は90%となっています。逆にいうと、借りている人の借地権の価値は6,000万円と評価されます。
 

貸家建付地の場合

貸家建付地とは、賃貸物件(戸建・アパート・ビルなど)として建っている土地をいいます。こちらも人に建物を貸しているため、自分で自由に利用できないことから評価減が認められています。

 

貸家建付地の相続税評価額は、「自用地の価額-(自用地の価額×借地権割合×借家権割合)」で求められます。

 

例)評価額1億円、借地権割合70%の場合
 → 1億円 −(1億円 × 0.7 × 0.3) = 7,900万円

 

借地権割合は地域によって異なり、国税庁の公表している路線価図で確認することができます。借家権割合は全国一律30%となっています。

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