かつてのライバルが仲間になっていく美容医療業界
オープンクリニックの考えに至る以前は、同業他社との交流自体がほとんどありませんでした。商売敵ということで、まさに「敵」として見ていた時期も長くありました。それが変化してきたのは10年ほど前からでした。何がきっかけだったのかは定かではないのですが、クリニック同士の交流が盛んになり、経営者同士、ドクター同士で食事をする機会も増えていったのです。
そこでさまざまな交流が生まれ、同業者だからこその、業界内の「ぶっちゃけ話」も交わされるようになりました。おそらくそれは自然発生的なもので、業界の成長とともに生まれてきたのだと思います。
その頃を思い返すと、皆が「どうしてそうなったんだろうね?」と首を傾げるのですが、それはやはり同じ土俵に立つ者同士、いつまでも肩肘を張って競争し続けるのも疲れるだけということに気づいたのかもしれません。
当時はまだ今のように美容医療が市民権を得られていない時代でした。そこでいがみ合っているよりは業界全体で世間への認知度を高めていこうという思いが一致したようにも思います。しかし、この時期が美容医療業界が大きく変わる端境期だったことに違いはありません。
クリニックの経営者レベルのドクターらが交流していくと、クリニック同士、ドクター同士の交流は若い世代にも伝播していくようになりました。聖心美容クリニック銀座院の牧野陽二郎院長らドクター有志が中心になって「クリエイションラボ(クリラボ)」という交流会をはじめ、複数の交流と勉強の場が作られました。
そうした流れは私も大歓迎だったので、クリラボ立ち上げ当初は、彼らの活動を応援したいという気持ちもあり、聖心のバックオフィスの会議スペースや手術室などを提供していました。ドクター同士が意見交換をするような交流はその後も続き、勉強会などがあればクリニックの手術室を提供していました。
このように、新人・中堅・ベテランを問わずドクターたちの交流もだいぶ増えてきたと思います。大きな組織にいれば同世代のドクターもいますが、中には自分で開業されている方もいて、そういう場合はなかなかドクター同士の交流や勉強会の機会がありません。まず有志のドクターから始まった交流には開業医の方々も加わるようになり、交流の輪はさらに広がってきました。特に今は開業ラッシュで、30代など若い世代で開業される方も増えているので、そうした方々も交えての勉強会や意見交換も盛んになっています。
私はJSAS(日本美容外科学会)の理事長も兼任しています。若手の交流に触発されたわけではないでしょうが、JSASの理事会にも最近は少し変化が出てきています。以前はほかのクリニックのビジネスのやり方に思うところがあっても、「それは彼らのやり方だから」ということで黙認し、表立って意見はしないような空気がありました。
しかし美容医療の認知度が高まってきた現在では、業界全体でもっとクリーンな状態を保とうという意識が強くなりました。疑問に感じることは率直に意見するようになったのです。厳しい発言も少なくありません。もちろん、それによって関係が壊れることなどないという信頼も私たちにはあります。こうしたところも、交流が盛んになったことの効果の一つだと思いますし、業界内の風通しが良くなってきたようにも感じます。
鎌倉 達郎
聖心美容クリニック
統括院長
