【第6回】なぜ聖心上海院は、コロナ禍とロックダウンを乗り切れたのか?(全10回)

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聖心美容クリニック
【第6回】なぜ聖心上海院は、コロナ禍とロックダウンを乗り切れたのか?(全10回)
※(画像はイメージです/PIXTA)

日本の高い医療技術とサービスを世界へ展開しようとする試みは、多くの困難を伴います。聖心美容クリニックの上海進出においても、法規制の違いによる事業計画の変更や、開院準備中の東日本大震災など、数々の逆境に直面しました。本稿では、聖心美容クリニック統括院長の鎌倉達郎氏の著書『信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より、美容クリニックの海外進出の際に立ちはだかった壁について解説していきます。

異文化と向き合った日々

来院されるのはほとんどが現地の中国人患者様でした。中国の口コミ文化は非常に影響力があって、評判を聞きつけて現地の患者様が徐々に増え始めて、来院されるようになったのです。

 

中国では、待合室に対する考え方も日本とはずいぶん違います。日本の聖心美容クリニックでは患者様のプライバシーを守るために、診察室だけでなく待合室も個室にしていますが、中国の患者様は、待合室まで個室だと何か閉鎖的な感じがしてイヤだと仰るのです。開院当初の待合室は個室にしていましたが、そのようなご意見をいただいたので、待合スペースをオープンな空間に作り変えました。

 

想定していなかったことはほかにもあります。病院スタッフに現地の方を採用しましたが、中国の方は基本的に職場では笑顔があまり見られません。クリニックスタッフに限らず、現地の方は外国人の私を気遣ってくださる優しく親切な方が多かったのですが、笑顔の方は少なかったので、日本人の私はそれが中国の慣習であり、そのようなものだと思いつつも、クリニックのスタッフには日本式の接遇を浸透させる必要があったので、笑顔で接するように当初は指導に苦慮していました。

 

そんな折に、当時上海で大繁盛しているレストランがあって、味も非常に美味しく、至れり尽くせりのサービスも素晴らしいのですが、何より驚いたのはお店のスタッフがみんな笑顔で接客されるのです。当時、中国人の店員さんは笑顔がないのは当たり前と思っていたので、スタッフ全員が笑顔で接客されることにたいへん驚きました。

 

経営者の方にどのように社員教育をしているのか是非うかがいたいものだと当時思ったほどです。ちなみに、その経営者の方はのちに見事に私の患者様になられて、日本のクリニックまでお越しになったこともあります。

 

また、ほとんどの方にお化粧の習慣がありませんでした。しかし、日本式の美容医療やサービスを期待して来院される患者様が多かったので、スタッフにはメイクはしてもらえるよう、根気強く指導し、話し合いました。そのために日本のスタッフ陣を上海に招聘(しょうへい)し、接遇とお化粧の指導をしてもらったこともあります。

 

国が違えば、働き方や商習慣も異なります。中国には、面子を大事にする文化があります。そのため、自分の業務に納得がいかないとどんどん意見をしてきます。スタッフの理解を得るためにも忍耐強く話し合いを続け、調整を重ねる必要がありました。結局、日本も中国も、スタッフを信用し、信頼を築くために必要なのは、お互いを尊敬し真摯に意見を重ねるコミュニケーションだという点は同じでした。

 

 

鎌倉 達郎
聖心美容クリニック
統括院長

 

 

※本連載は、鎌倉達郎氏の著書『信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと

信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと

鎌倉 達郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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